障害者自立支援法の全面施行を控えた8月14日、公明党は厚生労働大臣に対し、障害児のいる家庭と一般の子育て家庭との負担を公平にする観点から、通所・入所施設の利用に対する軽減措置の拡充などを求める緊急要望を行ないました。10月から障害児施設を含む全ての施設で原則利用料の1割負担と食費が課せられることに伴い、従来よりも保護者の負担が大幅に増えてしまうという不安の声を受け止めて緊急に申し入れたものですが、これに対して厚生労働省は同24日、地方自治体に対し通所施設に通う障害児(未就学)の負担を保育所の保育料並みとする新たな見解を提示しました。そこから全国の自治体では負担額の見直し作業に取りかかり、船橋でも検討の結果、保育料相当の負担額とすることを決めました。
緊急要望で「一般の子育て中の家庭の負担との公平性の観点から」として軽減を求めていたものが、具体的な形として「保育料相当」の負担額として示された、結果として当初より負担が軽減されたことは一定の評価をするものですが、ただ、一般の子育て世帯との公平という観点からはさらなる負担軽減措置が必要だとの思いで知的障害児通所施設「さざんか学園」の利用者負担について今議会で質問並びに提案を行ないました。
船橋では障害児通諸施設として、知的障害児通園施設「さざんか学園」、在宅肢体不自由児通園施設「簡易マザーズホーム(東・西)」、肢体不自由・知的障害児に指導を行なう「親子教室(3カ所)」を運営しているほか、市外の通所、入所施設を利用している障害児についても利用費助成を行っている。このほかに10月1日からは「第2さざんか学園」(法人立)が市内にオープンすることになっています。
このうち「さざんか学園」の利用者負担(第2さざんかも基本的に同じ)を巡っては、例えば市民税額14万1円以上28万円以下の世帯の場合、これまでの制度のもとでは月額7,300円であった利用者負担が「保育所の保育料並みとする」という考えに立った新たな利用料設定においても月額で25,691円と3倍以上の負担になってしまいます。「市の保育料と合わせました(ちなみに同じ収入階層の保育料は26,500円)。ほかの家庭の子育ての負担と同じレベルです」といわれても、保護者としては納得できません。そもそも保育所とは目的も内容も異なります。さらに、子育て世帯の負担の公平という観点からも、さざんか学園の利用料設定には大きな問題があります。以下はこの点を取り上げた今議会での質問要旨です。
『知的障害児通園施設「さざんか学園」の10月からの利用料について、4歳児以上の保育料に合わせるとのことだが、当然のことながら「さざんか学園」は保育所とは目的や内容が全くことなる。そのうえ、経済的負担という面でも一般子育て世帯との比較で考えた際、例えば保育所に子どもを2人以上預ける場合、子育ての経済的負担軽減のため、保育料は第2子は標準保育料の半額、第3子は標準保育料の10分の1となる。また、幼稚園に2人以上通わせる場合においても、同様の考え方から、就園児奨励補助金が第2子以降は増額して交付される。例えば市民税所得割額が18,601円以上135,000円以下の世帯の場合、第1子については56,900円の補助金額だが、これが第2子については126,000円、第3子以降については238,000円 となる。さざんか学園に通所している児童の兄弟が保育所に通っているという場合に保育料減額の規定が適用されるのか、また、兄弟が幼稚園に在園しているという場合、就園児奨励補助金の割り増し基準が適用されるのか、こうしたことが配慮されない、できないのであれば、結局障害児を育てる家庭の子育ての経済的負担という面でも極めて不公平だといわざるを得ない。
具体的にどうすればよいかを考えた場合、例えば、兄弟が保育所や幼稚園に通っている場合、兄弟全員が保育所に通っているものと見なして、あるいは全員が幼稚園に通っているものと見なして経済的負担に不公平が生じないよう利用料を設定するという方法も考えられなくはないが、事務作業が非常に煩雑になるうえ、保護者にも余計な手間を取らせることになり、現実的とはいえない。
そこで現実的な負担軽減方策を提案するものだが、まず1点目として、さざんか学園の利用料については、一律に保育所に2人以上預けた場合の2人目に適用される保育料、すなわち標準保育料の半額程度とすること。そのうえで、2点目として現実に3人以上の子どもをさざんか学園と保育所、幼稚園に通わせている世帯に対しては、それぞれの所管と連携を取って、障害児を育てるがゆえに過度の負担を強いられることのないよう負担軽減策を講ずること。以上のことを検討し、速やかに実施することを強く求める。』
保育所であれ幼稚園であれ第1子の負担を10とするならば、第2子は半分の5、第3子以降は1割の1、10:5:1の割合で子育ての負担軽減を図る。これは公明党が野党時代から強く主張し、推進してきた経緯があります。
子どもが障害を持つが故に不公平な負担を強いられるようなことがあれば、市町村レベルにおいてもまず我々がその是正に取り組む責任があります。
障害者自立支援法は、すべての障害者が必要なサービスを公平に利用して地域で生活できる基盤整備をめざすものであり、この理念自体には異論は少ないと思います。ただ、過重な負担を強いられ、その結果、サービスが利用できないという事態が生じては本末転倒です。こうしたことが起こらないよう法施行後も本来の目的に適った運用がなされているか、今後もしっかり検証してゆきます。
高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることを可能にするための地域密着型サービスの推進について、今議会で行なった質問とそれに対する答弁を以下にまとめます。
Q. 本市の整備計画では平成20年度の見込量として、認知症高齢者のグループホーム419床、小規模特養29床としているが、確保できるのか。また、地域密着型特定施設について今回の計画にはないが、今後の整備についてはどう考えているのか。
A. 認知症高齢者グループホームについては、今年度から20年度にかけて毎年公募を行ない、適正な審査をし、選定する。整備に当たっては見込量に達成させるということだけでなく、整備地域についても適正な配置となるよう取り組んでゆく。地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、いわゆる小規模特養については、今年度公募を実施する予定である。 また、地域密着型特定施設については、国が示した参酌標準を基に検討した結果、認知症高齢者グループホームや小規模特養の整備が優先急務のため、次期計画に向けての検討課題とし、今回計画には見込んでいない。
Q. 認知症対応型通所介護と小規模多機能型居宅介護の整備見通しについてはどのように考えているのか。
A. これらについても市のホームページで申請方法についてのお知らせを掲載するなど、計画した見込量に向けて整備を進めている。
Q. 地域密着型サービスの整備と合わせ、これらサービス利用者と、地域との連携をいかに図ってゆくかも大きな課題と考えるが、この点についてはどのように取り組んでゆく考えなのか。
A. 質問のとおり地域密着型サービスの利用者と、住み慣れた地域との交流を図っていくことは非常に大切なことである。小規模多機能型居宅介護や認知症高齢者グループホームなどは国の省令により運営推進会議の設置が義務づけられている。これは地域との連携等を目的としたもので、利用者、利用者の家族、地域住民の代表者、地域包括支援センター職員、事業について知見を有する者等に構成されている。今後はこの会議を、地域交流を図るうえで活用してゆく。
まず、上のグラフの説明から。税制改正に伴って年金生活の高齢者世帯の可処分所得が平成18年度から20年度までどのように推移するかを試算したもの。横軸の数字は年金収入額(円)、縦軸の数字は年金収入額から税金と社会保険料を払った後に手元に残る可処分所得額(円)を示しています。
試算の前提としたケースは(1)今年1月1日時点で66歳以上で配偶者(70歳未満、収入なし)と2人暮らし、収入は年金のみ、住まいは賃貸住宅(2)税金は住民税と所得税、社会保険料は国民健康保険料と介護保険料。
税制改正に伴って特に65歳以上の高齢者の方については、昨年度までは市県民税が非課税であったものが、今年度から課税されるケースがかなり発生したことで、各地で混乱が生じているのは報道などでご案内の通りです。今回の税制改正は世界に類を見ないスピードで進む高齢化・少子化を背景に、将来にわたって社会保障制度を維持してゆくためには、現役世代のみに負担を押しつけるには限界がある。このため負担できる高齢者にも負担をお願いしたもので、今回の老年者控除、公的年金控除の見直しによる増収分は、安定した年金制度確立のための財源として役立てることになっています。ただ、これはあくまでも負担できる方に負担していただくということが大前提であり、税制改正に伴って本来負担できない方にも重い負担を強いるようなことが生じた場合には、国においても地方においても速やかに対応策を講じるべきです。9月議会で取り上げた高齢者の在宅福祉サービスもこうした視点から質問したものです。税制改正に伴う全般的な負担増の問題については改めて吟味するとして、ここでは今回質問した在宅福祉サービスに絞って論じたいと思います。
船橋市では昨年度まで住民税(市県民税)本人非課税の方に対して介護用品(おむつ)支給事業を実施していました。対象者には月額6,250円を限度に介護用品を支給するもので、17年度の利用実績は625人。これは船橋の実施している高齢者在宅福祉サービスのなかでも緊急通報装置貸与事業に次いで利用者が多い事業、即ち必要性の高い事業です。上のグラフでは一番右の収入(267万円)の世帯のみが市県民税課税で、それより左はすべて17年度は非課税です。したがって介護用品(おむつ)支給事業の対象でした。
税制改正により、17年度までは本人非課税で介護用品の支給を受けられていた方が、課税になってしまうことによってこのサービスを受けられなくなってしまうことがないよう船橋では支給の要件を見直し、平成18年度は住民税の課税要件を12,000円以下の方まで対象とする。19年度は25,000円以下、20年度は37,000円以下と段階的に緩和することとしました。税制改正によって従来、福祉サービスを受けられていた方が受けられなくなてしまうようなことがないよう、支給要件を見直したことは評価できます。ただ、この要件が本当に妥当なのかどうかを検討した結果、上のグラフに矢印で示しましたが、船橋の設定した要件では昨年度までは対象となった方が18年度、19年度には対象とならないというケースが生じてしまいます。しかもグラフを見ていただければ分かる通り、収入は多いにもかかわらず、可処分所得はより収入の低い世帯よりも少ない、すなわち可処分所得が逆転している層が福祉サービスも受けられなくなってしまいます(可処分所得の逆転は公的年金控除の縮小と合計所得金額125万円以下に対する非課税措置の廃止を同時に実施した結果生じたものですが、詳しくは全般的な負担増のなかで述べたいと思います)。
いずれにしても船橋の設定した税額要件では不公平が生じるということで、要件の大幅な緩和が必要だと主張して行政の考えを質しました。これに対する答弁は、「税制改正に伴い、引続き支給対象になるように所得要件を段階的に緩和する措置を講じたところ。また、新規申請者についても、継続利用者との均衡がはかれるよう対応したところ」としたうえで、「しかしながら、指摘されたように当初の趣旨が十分に達成できないようなケースがあれば、現行の制度を検証のうえ、追加的な対応を行なってゆきたい」と、現行の要件について見直してゆく考えを示しました。
今月4日から26日までの会期で船橋市議会(9月議会)が開かれています。今日(12日)は私の一般質問の日でした。
今回の一般質問では、(1)介護保険と高齢者福祉(2)障害者の自立支援ーについて取り上げ、(1)の介護保険と高齢者福祉では、介護予防への本市の取り組みの現状、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるための地域密着型サービスの本市における取り組み、税制改正に対応した在宅福祉サービスのあり方について、(2)の障害者の自立支援については、障害者自立支援法で新たに導入された障害程度区分認定の適正確保、就労支援への取り組み、子育て世帯の負担の公平性を考えた際の知的障害児通園施設「さざんか学園」の利用料のあり方ーについて質問並びに提案を行ないました。
以下は今回の質問・提案の要旨です。なお、質問や提案の背景、答弁等の詳細についてはこれから順次補足してゆきます。
(1)介護保険と高齢者福祉
■介護予防
本市における、新予防給付及び地域支援事業の介護予防事業の実施状況はどのようになっているのか。また、地域包括支援センターの業務実績はどうか、来年度以降の体制整備についてはどのように考えているのか。
■地域密着型サービス
本市の整備計画では平成20年度の見込量として、認知症高齢者グループホーム419床、小規模特養29床としているが確保できるのか。また、地域密着型特定施設について今回の計画にはないが、今後の整備についてどのように考えているのか。地域密着型サービスの整備と合わせ、これらサービス利用者と、地域との連携という課題にはどのように取り組んでゆくのか。
■税制改正に対応した在宅福祉サービスのあり方
在宅高齢者の福祉サービスについて、今回の税制改正により従来はサービスを利用できた方が利用できなくなるということがないよう、支給要件等について配慮がなされていることは評価するが、ひとつだけ疑問に思うことがあるので質問する。在宅福祉サービスのメニューのひとつである介護用品(おむつ)支給事業について、税制改正後の新たな基準では昨年度までならば新規に支給を受けられた方が、今年度以降は受けられなくなるケースが懸念されるが、このことについて市としてはどのように考えているのか。
(2)障害者の自立支援
■障害程度区分認定の適正確保
障害程度区分の認定作業において、2次判定で上位区分に変更された割合はどの程度か、また、変更されたケースでは、どのような要因にによって変更されたのか。認定が担当者によって差異が生じないよう、どのような対応を図っているのか。2次判定における程度区分変更について具体的指針が必要とされるが、本市ではどのように取り組んでゆく考えなのか。
■就労支援
障害者自立支援法により、本市の障害者に対する就労支援はこれまでと比べて具体的にどのように変るのか伺いたい。
■さざんか学園の利用料
知的障害児通園施設「さざんか学園」の10月からの利用料について、4歳児以上の保育料に合わせるとのことだが、当然のことながら「さざんか学園」は保育所とは目的や内容が全くことなる。そのうえ、経済的負担という面でも一般子育て世帯との比較で考えた際、例えば保育所に子どもを2人以上預ける場合、子育ての経済的負担軽減のため、保育料は第2子は標準保育料の半額、第3子は標準保育料の10分の1となる。また、幼稚園に2人以上通わせる場合においても、同様の考え方から、就園児奨励補助金が第2子以降は増額して交付される。例えば市民税所得割額が18,601円以上135,000円以下の世帯の場合、第1子については56,900円の補助金額だが、これが第2子については126,000円、第3子以降については238,000円 となる。さざんか学園に通所している児童の兄弟が保育所に通っているという場合に保育料減額の規定が適用されるのか、また、兄弟が幼稚園に在園しているという場合、就園児奨励補助金の割り増し基準が適用されるのか、こうしたことが配慮されない、できないのであれば、結局障害児を育てる家庭の子育ての経済的負担という面でも極めて不公平だといわざるを得ない。
具体的にどうすればよいかを考えた場合、例えば、兄弟が保育所や幼稚園に通っている場合、兄弟全員が保育所に通っているものと見なして、あるいは全員が幼稚園に通っているものと見なして経済的負担に不公平が生じないよう利用料を設定するという方法も考えられなくはないが、事務作業が非常に煩雑になるうえ、保護者にも余計な手間を取らせることになり、現実的とはいえない。
そこで現実的な負担軽減方策を提案するものだが、まず1点目として、さざんか学園の利用料については、一律に保育所に2人以上預けた場合の2人目に適用される保育料、すなわち標準保育料の半額程度とすること。そのうえで、2点目として現実に3人以上の子どもをさざんか学園と保育所、幼稚園に通わせている世帯に対しては、それぞれの所管と連携を取って、障害児を育てるがゆえに過度の負担を強いられることのないよう負担軽減策を講ずること。以上のことを検討し、速やかに実施することを強く求める。
本年6月議会で主張した(国民健康保険加入者の)出産育児一時金の全額貸付が、10月1日からの出産育児一時金引き上げ(30万円から35万円)に合わせて実施されることになった。これまでは予定日まで1ヶ月を切った場合や妊娠4ヶ月以上で医療機関に支払いの必要が生じた場合に出産育児一時金の9割(=27万円)を限度に貸し付けていたものが、1度の手続きで全額(10月からは35万円)の貸付が受けられるようになった。
(参考=この問題を議会で取り上げた議事録)(06年)6月議会
出産育児一時金を使いやすくするための方策として保険者によっては、貸し付け制度の代わりに受領委任払い制度をとっているところも増えている。国も受領委任払い制度の導入を保険者に対して促しており、船橋市も来年度から受領委任払い制度を導入する方針だ。受領委任払いは、事前に協定を結んだ病院等で出産する場合、出産育児一時金を保険者から直接病院等へ支払うもので、本人は一時金の金額を上回る部分だけを支払えばよいというもので、それはそれで負担の軽減に一定の効果がある。
ただ、そもそも出産育児一時金は、分娩費のみに使途が限定されているものではないこと、また、出産は一般の疾病と異なり利用される病院が例えば里帰り出産のように市域、県域を超えて広範囲に及ぶことから、受領委任払い制度が利用できないケースも多く考えられ、その場合は結局、病院等への支払いを一旦は自前で工面しなければならないこと、さらには、手続きに要する手間は変らないことなどを考えた際、貸付制度を見直すことにより、出産前に全額の貸付を受けられるようになれば、そちらの方が使い勝手がよい、負担感の軽減のためにはより効果的であるとの考えから貸し付け制度の充実を提案した。
調べた範囲では受領委任払いを行なっているところは貸付については行なっていないところが多い。どちらの制度が優れているかを論ずるよりも、利用者の使い勝手の点から考えれば受領委任払いと全額貸付の2本立てで運用するのが正解だと思う。大切なことはより多くの市民のニーズに応えられる制度にできるか否かだ。
事例はそれほど多くないものの、貸付と受領委任の2本立てでやっている自治体の状況をみてみると、例えば、船橋と同じ中核市のO市の場合、平成17年度の総給付件数576件に対して受領委任払い利用が218件、これに対して貸し付け制度の利用は5件と圧倒的に受領委任払いの利用が多い。しかしながら船橋と同じ首都圏に位置するT市においては、17年度の総給付件数349件に対して受領委任払い25件、貸し付け制度の利用は12件となっており、両制度の利用実績にそれほど大きな差はない。地域によって利用状況にはかなりの差があるようだ。また、これら2市の貸し付け制度の限度額は8割となっている。全額貸付であればさらに利用は伸びるのではないだろうか。
こうしたことも踏まえ、船橋においては受領委任払いを導入した後も、貸付制度は残す、即ち2本立てで運用し、その利用状況をよく見極めることを求めている。
「基本的に障害をもつ子どもの就学先について、教育委員会と保護者の考え方が対立するということはありません」
メモを取る手を止め、しばし頭の中で何とか考え方を整理しようと試みた。「私の質問の仕方が悪かったのか?」「船橋では3分の1の保護者が就学指導委員会の答申を受け入れていない」「かつて教育委員会の幹部と意見交換した際、『船橋のやり方が本人のためを考えた際、最もいいんです。』と語っていた」「しかし、船橋の対応が必ずしも最善とは思えない」「本人のためにどちらが本当によいのか?それは理屈ではない。本人の生き生きとした表情がこの問題に対する回答を雄弁に物語っている」「教職員やそれをサポートする人材の配置が特に手厚い訳ではない。もちろん教員の資質がどうのとう問題でもない。一体何が違うというのか?」
あれやこれやと考えを巡らせている場所は、大阪府枚方市の公立小学校の校長室(注=冒頭の写真は本文とはほとんど関係ありません。枚方市では全小中学校にAEDを配備しているというお話を伺い撮影した一コマです)。
伺った小学校は早くから養護学級が設置されている学校だが、実はこの学校の養護学級に在籍する児童の一人は、千葉県内の小学校に在籍していたMちゃん。親の仕事の関係で枚方市に引っ越しっていったのだが、引っ越し先の教育環境が極めて良いとの便りを聞いて、自分の目で確かめたいと思い、教育現場を訪問させていただいた。校長先生は「なぜうちのようなごく当たり前の学校に?」と、いささか当惑されたご様子だったが、少なくとも私にとっては大違いなのだ。
何が違うのかを伺った話をもとに整理してみると・・・
□全ての小中学校に特殊学級(大阪では養護学級)が設置されているか
□こどもの就学指導に際しては、保護者の意向を最大限に尊重しているか
□「ともに学びともに育つ」という考えに立ったカリキュラムが作成されているか
□全ての教職員が在籍する障害児の名前を知っているか
□学区内で養護学校に通うこどもやその保護者を行事に招待したり、定期的に交流する機会を設けているか
□勉強もちゃんと教えているか
□部活にも参加できるか
要するに上のようなチェックリストの全ての項目にチェックが入るのが枚方市ということになる。枚方に限らず、大阪府の場合どこも大体同じ結果になる(大阪府全域の養護学級設置率は平成18年5月現在小学校97.6%、中学校97.8%にのぼる)。
人口約40万人の枚方市には公立の小学校が45校、中学校は19校あるが、このうち特殊学級(大阪では養護学級という)の設置率は平成17年度で小学校97.8%、中学94.7%。今年度(18年度)は残る小学校、中学校各1校に特殊学級が設置され、障害の有無にかかわらず地元の学校で受け入れる体制が整った。
こどもの就学指導については、いま現在、幼稚園、保育園に教育委員会の担当者が訪問してこどもの実態の把握をおこなっているところで、次の段階として9月以降、保護者との面接を行ない、意向を聞きながらどのような就学先がよいかの話し合いを行なう。その後も保護者からの要請があれば随時面接を行ない、12月頃に最終的な就学先が決定する。あくまでも「保護者の意向に沿った」就学先だ。
伺った小学校でも感じたことだが、養護学級の担任だけでなく学校全体で障害児の教育に関わっていることが当たり前になっている。「ほんとうにみんなが声をかけてくれるんです」とはお母さんの弁。特学のこどもの教育は特学の担任の仕事という考えでは、本当に必要な教育的な支援はできないし、教師自身も行き詰まってしまう。「授業でも、この子には難しいかなというところは、色々やり方を工夫してくれます」。生活習慣の獲得とともに、基礎的な学力の養成にも重点をおいた指導が行なわれており、こちらにきてから学力も格段に向上したという。ちなみにMちゃんの所属しているクラブはダンス部。
この学校の場合、学区内で養護学校に通っている子どもや保護者に対しても、運動会などの行事に招待しているほか、年2回養護学校の子どもや保護者も交えてのフレンズ交流会とう催しを開催して交流を深めている。この交流会には小学校の全教員も参加しており、小学校に在籍している、いないに関わらず地域にいる子どもをみんなが把握している。
これまで書いてきたことは、一番目の特殊学級の設置以外は全て「できる」「できない」のレベルの話ではなく「やる」か「やらない」かのレベル、お金をかけずともやる気になればできる話だ。
ノーマライゼーションの実現、『障害の有無にかかわらず、ともに人格や個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会』という理念の実現は、ひとえに教育の現場がどう対応するかにかかっている。それなくして障害者の自立は絵に描いた餅だ。
当日、参観させて頂いたのは通常学級での国語の授業。教室の前に出てみんなにお手本を見せ、拍手を浴びるMちゃんはクラスのヒーローだった。
イケア船橋店視察の目的は、船橋においては病院とヤクルト以外に聞いたことのない事業所内保育施設をあえて設置した経緯を伺うこと、それから、障害者雇用に対する考え方を知ること、であった。
イケア船橋店で働く障害者は現在9名。
オープン当初から法定雇用率を達成しているが、「来週からさらに4、5名の障害者のトライアル雇用がジョブコーチの指導のもと1、2ヶ月の期間でスタートする予定です」と人事担当の責任者は語る。障害者雇用についてイケアはどのような考え方で取り組んでいるのであろうか。
日本の場合、障害者が障害のない人と同様に、その能力と適性に応じた雇用の場に就くことができる社会を実現するため、常用労働者数が56人以上の民間企業は、1.8%(56人に対して1人)の障害者を雇用することが義務づけられている。
法定雇用率未達成の企業は、未達成分の障害者一人当たり月額5万円の納付金を納めなければならないとされているが(このペナルティーは当分の間、常用労働者301人以上の企業について適用)、法定雇用率はこれまで1度も達成されたことはなく、厚生労働省の統計では平成17年度の障害者雇用率も1.49%にとどまっている。
イケアの場合、『Diversity=多様性、違いを受け入れ、尊重すること』という企業理念を掲げており、障害者雇用の取り組みもここから出発している。「私もイケアに入る前、国内の企業で人事を担当していた経験がありますが、そのときは、(障害者雇用については)法律で義務づけられている数字の確保ということがまず最初にありましたが、実際に各部門への障害者の配置について、どのような作業があるのか研究し、実施した結果は、彼ら(障害者)から学ぶことがたくさんあるということを実感しています。
障害者の方が健常者よりもよほど良い仕事をしているということもありますし、何よりも人間らしさを忘れずに仕事ができる環境が育っていると思います」。
イケアの障害者雇用への取り組みは法定雇用率の達成のみに止まらない。
「あくまで日本でのイケアの事業が軌道に乗っての話ですが、2年目以降は法定雇用率の2倍を目指そう、その後は3倍を目指そう。それがDiversityなのだ。これが社長の意向です」
イケアは船橋店出店に際し、障害者雇用についても県の雇用促進課と密接に連携を取りながら、オープンの2ヶ月前からトライアル雇用を実施している。また、国内法で定められた雇用率達成のため、この分野では豊富なノウハウの蓄積を持つオリエンタルランドに通って学ぶなど、多大な努力を払っている。
国内企業の障害者雇用が法定率を下回り続けるなか、新進の海外企業が法定率の3倍を目指そうと謳っている現実。この国は理念とそれを実現するための施策がちぐはぐというか充分に吟味されていないといわざるを得ない。それはとりもなおさず私たち政治家の責任でもある。
では、どこがまずいのか?少し長くなるが、やはり外資系企業の人事担当者から伺った話を以下に引用させて頂く。
『障害者雇用促進法に定められた雇用率(1.8%)を達成するため、10年前から取り組んでいるが、入っては辞め、入っては辞めの連続でうまくいかなかった。国の機関から高名な先生を招いたりもしたが、全て駄目だった。昨年(2004年)にプロイジェクトチームを立ち上げ、検討した結論は『(従来のように)社員が(障害者雇用)を担当するのはやめよう』ということだった。社員はそれぞれ現業をもっており、障害者雇用、定着のために割ける時間は自ずと限られている。職場への定着を目指すならば、障害者雇用に精通している人をリクルートしようという結論になった。
ジョブコーチを社員として移籍させて欲しいと県の商工労働部に掛け合った。前代未聞のことで、説得にかなりの労力を要したが、2名のジョブコーチを正社員として迎え入れることができた。作業指導は社員が行ない、障害者が職場に適応するための様々なケアはジョブコーチが受け持つとの役割り分担のもと今年(2005年)2月から10名の障害者(身体障害者1名、知的障害者9名)の職場定着の試みがスタートした。半年経った現在も辞めた人は一人もいない。
定着のための工夫のひとつとして、職場で問題があった場合の解決法についても色々考え、些細なことでも保護者を交え十分に話し合うことにした。また、話し合いの場には必ず総務部長、人事部長が入ることにした。現場の次長、課長任せでは、「何でこんな作業ができないの」など、結局、障害者を非難する話になってしまう。
それでは定着に結びつかないということで、部長も入って話し合うことことにした。また、特定の人をひいきしているという批判を保護者から受けないよう大会議室で全員に参加してもらって話し合うようにした。現在、障害者雇用率は1.2%だが、年内には法定雇用率(1.8%)達成に自信をもっている。』『数字上、法定雇用率を達成している企業はたくさんある。
ただ実態をみると、障害者雇用を下請けに押し付けて数だけ上げている、いてもいなくてもよいという考えでやっている企業も少なからずある。私たちは障害者雇用に真剣に取り組んでいることを1%の方に支持していたでければよいと考えている』
イケアを含め、ここに引用した国際的な企業はその国で事業展開を図る際、当然のことながらその国における法令遵守ということを考える。障害者雇用についても日本では法律で雇用すべき人数が決まっているからまずは、その達成のためにどうすれば良いのか考える訳だが、そのための相談・支援体制の窓口が縦割りで面倒くさい、何でワンストップサービスでできないのかというのが不満のひとつ。また、私たちは国内法令を遵守しているのに、それが積極的に評価されないのはどういうことか、という思いがある。
例えば、アメリカの場合、日本のように法律で障害者雇用を義務づけることはしない。ただ、障害者雇用の状況は、企業の格付けのうえで大きなウエイトを占めている。最終的な評価は消費者と投資家に委ねるという考えなのだろう。
日本においても、自治体発注工事の入札参加資格に障害者雇用状況を追加し、法定雇用 率の達成企業に点数を加算するなどの事例がちらほら見られるようになりつつある。
こうした事例も参考に、障害者雇用について、真剣に取り組む企業に対する支援を行政として何ができるのか。私自身研究してゆきたいと思っている。