つのだひでお(角田 秀穂)|衆議院議員|公明党
つのだひでお(角田 秀穂)|衆議院議員|公明党

誕生の現場から〜船橋中央病院周産期センター〜

船橋市内の病院(船橋中央病院)に周産期センターが開設されて5年目。それまでは妊娠6ヶ月未満の超早産など専門的なケアが求められる出産は松戸市、千葉市、東京都内の病院に搬送されていましたが、船橋市にNICU(新生児集中治療室)を備える周産期センターができてからは、千葉県の周産期死亡率も全国平均を下回るようになった。

ただ、子どもや母体の救命率の向上も医師や看護師などスタッフの献身的な努力によって支えられていることを現場に伺って痛感した。
24時間気の抜けないケア、他病院からの緊急搬送…。担当医や看護師の当直は月8日から10日に及び、「このままでセンターを維持できるのか」。現場からは不安の声も聞かれる。

低体重web.jpg

船橋中央病院の周産期センターの入院者数は平成15年の開設以来、5年間で約1000人にのぼり、このうちの7割が船橋市民とのこと。(上のグラフは体重別の生存状況。500gなら50%以上、800gを超えれば9割以上小さな命を救うことができる)
低体重児の出生は年々増加しており、同センターでも開設した15年度は196人だった入院数が昨年度は266人へとハイリスクの患者は確実に増えている。不妊治療の進歩に伴って双子など多胎妊娠が増えていることや妊娠中の過度なダイエット等いろいろ原因は考えられるとのことだが、28床のNICUは現在、満床の状態。
加えて誕生後、同センターと同じレベルのケアを施せる施設がないため、1年2年と入院が長期化している長期入院児が増えており、本来の目的である急性期の患者を受け入れられないという問題も顕在化しつつある。
長期入院児の問題は同センターに限ったことではなく、全国的に問題となっており、受け入れ可能な施設整備など早急な対策が求めらている。

新年度予算案を審議する3月議会が2月27日からスタートしました。厳しい財政状況を反映して対前年度マイナスの緊縮予算となっていますが、そのなかでこれまで議会で提案してきたことがいくつか盛り込まれました。概要をご報告します。
■妊婦健診無料化の拡大〜2回から5回へ〜
■下水道接続工事の負担を軽減〜無利子貸付制度の限度額を引き上げ〜
■発達障害児の支援を充実〜市内施設で感覚統合療法がスタート〜
■乳幼児期から障害児への一貫した支援を〜新組織・『療育支援課』が発足〜

■妊婦健診無料化の拡大〜2回から5回へ〜
妊婦健診は通常、出産までに12〜14回程度受ける必要があるといわれますが、母子手帳についてくる無料受診券は2回分のみ。残りは自己負担となりますが保険がきかないため、経済的な負担感は大きなものがあります。また、産婦人科の”たらい回し”の問題ではかかりつけ病院がない、即ち病院で妊婦健診を受けていない場合に起こるケースが大半ということも踏まえ子育て支援の一環として無料化の拡大を議会で訴えてきました。この結果、新年度から無料の妊婦健診が2回から5回に拡大されます。

■下水道接続工事の負担を軽減〜無利子貸付制度の限度額を引き上げ〜
下水道が整備された地域では、条例で3年以内に下水道に接続する工事を実施することが義務づけられています。工事の経済的負担を少なくするため市議会で様々な負担軽減策を主張し、実現してきました。
下水道への接続にかかる工事費は敷地内の配管の状況によっても金額に大きな開きがあり、現行の無利子貸付制度の限度額でも収まらないケースもかなりあります。市内の工事費の実態を踏まえ、限度額の更なる引き上げを早急に実施するよう議会で主張。この結果、新年度から浄化槽から下水道に切り替える場合で30万円から35万円に、汲み取り便所の場合で45万円から50万円へと引き上げられます。

■発達障害児の支援を充実〜市内施設で感覚統合療法がスタート〜
感覚統合療法は、もともとは半世紀ほど前にアメリカにおいて問題となり始めていた学習障害児へのリハビリテーションを目的に開発された技法で、日本においては1976年に初めて行なわれ、その後の実践の積み重ねのなかで子どもだけでなく「認知症」「統合失調症」の治療への応用も試みられるようになっています。

「注意が持続しない」「感情をコントロールできない」「常に動き回る」「読み書き算数ができない」「縄跳びなどの運動ができない」等々、行動や認知、情緒、運動企画などの障害の原因として、触覚、視覚、聴覚などの感覚を脳の中で処理する過程に何らかの障害があることが強く疑われる場合に、その子どもの症状に応じて様々な器具を用いたりしながら適度な感覚刺激を与えることによって脳の働きを促すことで、症状・状態の改善が認められるケースが多く報告されています。
近年発達につまずきのある子どもの実態が徐々に明らかになるにつれ、こうした子どもを育てる市内の保護者からも感覚統合療法の実施を求める声が高まっていることを受けて昨年3月議会で早期の実施を強く要望。新年度からJR西船橋駅近くの『こども発達相談センター』で感覚統合療法がスタートすることになりました。

■乳幼児期から障害児への一貫した支援を〜新組織・『療育支援課』が発足〜
障害児の療育について、本市においても複数の機関・施設でサービスが提供されていますが、指導・支援の計画づくりが個々の施設ごとに行なわれているため、また、縦割り行政の弊害もあって、一人一人の発達段階に応じた適切かつ一貫した支援が提供されていないという状況がありました。
ひとりひとりに最適な支援計画の作成とそれに基づく一貫した支援の実施が行なわれるよう、医師、理学・作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士などで構成する専門家チームを置き、支援の充実を早急に図るべと議会で主張。これを受けて一貫した支援を行なうための組織として『療育支援課』が新年度から発足することになりました。

「いつになれば大通りの整備が終わるの」「高齢者も安心して歩ける歩道を早く造って」等々、市民相談の大半は道路に関する要望です。ムダな道路どころか、必要な道路整備すら大きく立ち後れている、幹線道路が未整備のために生活道路に大量のクルマが流入し、住民の安全を脅かしている状況を早く改善しなければならない、道路整備は最重要の課題…。これが船橋の実情です。

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いま、道路特定財源を巡っての議論が加熱しています。
上のグラフは道路特定財源の暫定税率が廃止された場合の船橋市の影響額を試算したものです。船橋では平成18年度で21億円あった道路整備のための財源が11億円へと約10億円の減収となる計算になります。これは来年度以降、3・4・27号線を含め新規の道路整備は全て凍結、痛んだ道路の補修しかできないということを意味します。もちろん地元自治体としては「予算がないので道路整備はできません」では済まされませんから、福祉や教育など必要な予算を削って財源を捻出せざるを得ない、結果として市民生活にしわ寄せが生じることになります。
原油高騰に起因する市民負担の軽減策、中小企業対策、これらは暫定税率の維持か廃止かという二者択一の議論で正解が得られる問題ではないはずです。もっと冷静な議論が必要だと思っています。

福祉、環境、衛生、経済、教育、土木…。自治体が日常的に行なっている仕事(事業)は極めて多岐にわたり、船橋市の場合で、ざっと数え上げただけでも2,000以上に上ります。それら一つ一つの仕事が「最小の経費で最大の効果が得られるよう実施されているか」言い換えれば「税金の無駄遣いがないか」をチュックすることが議会の主要な仕事のひとつです。

「何らかの障害を負って、発達につまずきのある子どもに対する支援(療育)についていえば船橋市は非常にサービスが悪いですね」
(私)「そんなことはないと思います。療育に携わる専門職も他市と比べても遜色ない、むしろ手厚く配置されています」

「しかし、保護者の声を聞いていると”隣の市は良い。それにひきかえ船橋市はダメだ”とみんな言ってますよ」

以上の会話は船橋市民のほか、周辺市の市民も利用する産科病院に伺った際の担当医師とのやりとりです。
正直、私自身ショックを受けました。「一体、何がまずいのか」を調査しました。結果は連携のまずさでした。

12月議会(07年)〜発達支援の体制整備を

上の図は、船橋市における障害児及び発達障害児の療育サービスに至るまでにどのような経路をたどるかを関係部局からの聞き取りをもとにまとめたものです。

見づらくて恐縮ですが、療育関係の仕事(事業)に限っても、多くの事業が本市において実施されていることが見て取れると思います。

産科医から船橋よりはるかにサービスが良いと指摘された自治体にもお邪魔して話を伺いましたが、療育に携わる医師、療法士、保健師など専門職のマンパワー、投じている予算などどれをとっても船橋の方が充実していました。

「では、一体何がまずいのか」。聞き取り調査を行う中で明らかになったのは、「個々の事業には人も予算もしっかり付けられているが、事業間の連携がとられていないため、結果として保護者の不満が募っている。即ち税金が有効に使われていない」ということでした。

例えば、知的障害児のための療育施設『さざんか学園』では、子どもの状態に応じてどのよう目標を立て、指導してゆくか保護者と話し合って計画を作り、それに基づき指導しています。療育が効果を上げ、排泄など身の回りのことがある程度できるようになり、次にステップとして、幼稚園や保育園に入園することが適当と判断されても現実には受け入れてもらえません。

理由は先にも触れましたが、縦割り行政のなかで連携が全く取れていないからです。療育の現場では「わずか数人の集団でいつまでも過ごしていては社会性に偏りが生じる。小学校に上がる前のわずかの時間でも健常児集団のなかに入ることが本人の発達のためにも必要」と判断しても受け入れ側の、特に保育の現場では「障害児枠が一杯のためダメ」と断られる。こうした弊害は何もさざんか学園に限らず、学校に上がる際の教育委員会との連携の悪さなど、船橋の場合あらゆるところで見受けられます。

個々の仕事(事業)を取り上げてみた場合、人もお金も他市と比べて遜色ない、あるいはそれ以上だといくら担当者が胸を張っても、一人の子どもの乳幼児期から発達段階に応じた支援という面から見た場合、人もお金も有効に使われていない。個々の事業のチェックもさることながら、それらがトータルとして住民福祉の向上に役立っているのか否か、そうした視点で点検する必要性を痛感させられた事件でした。

つのだ:障害児の療育について、本市においても複数の機関・施設でサービスが提供されているが、指導・支援の計画づくりが個々の施設ごとに行なわれているため、一人一人の発達段階に応じた適切かつ一貫した支援が提供されていない。ひとりひとりに最適な支援計画の作成とそれに基づく一貫した支援が行なわれるよう医師、理学・作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士などで構成する専門家チームを置き、機能の充実を早急に図るべきだ。

答弁:障害を早期に発見し、早期療育を実施してゆくことは、その後のライフステージにおいて適切な支援を行ない将来の生活の質を向上させるために大変重要。各施設の専門職員を有機的に結びつけ、一人ひとりに効果的な支援を行なうため、現在、各専門職の配置のあり方や一元的な支援など、各施設の資源や施策を効果的に実施するための検討を重ねている。

知的障害児が学ぶ市立特別支援学校(旧市立養護学校=市内金堀町)のこの10年間の児童生徒数を見ると、10年前は小学部、中学部、高等部合わせて100人未満だった在校生が昨年は189人と約2倍に増加しています。昨秋、学校を見学させていただきましたが、教室に入り切らず廊下まで机がはみ出している状況で、早急な環境改善が必要と痛感しました。

特別支援学校のなかでも高等部はこの10年で2.5倍に急増しています。在校生の半分は就職希望とのことですが、例えば平成18年度の卒業生31名中就職できた者は8名にとどまっています。この理由には、ひとつには、採用する側の企業に障害者雇用に対する理解が不足していることが挙げられます。毎年職業安定所が管内の企業に知的障害者の採用に対する意向調査を実施した結果が特別支援学校に送られてきますが、採用の意向を示す企業はわずか数社にとどまっています。いまひとつには、採用時期の問題があります。積極的な採用意向を持つ企業でも、年度の途中から働いて欲しい、例えば10月から来て欲しいといった形で求人をかける。「学校である以上中途で退学させて就職させることはできない」(市立特別支援学校)ため結局、就労支援の事業所等からの採用となってしまうため、卒業生の就職先確保をさらに難しくしているという面もあります。

特別支援学校の生徒の職場開拓は専ら現場の教師に委ねられているのが現状です。新聞に折り込まれてくる求人広告などを頼りに、夏休み期間中400社から500社を訪問して何とか職場実習を受け入れてもらえないかとお願いに歩く苦労を現場で伺いました。。在校児童生徒が増加し続ける中で、現場だけの努力では限界があります。
障害者の雇用については法律で市役所の場合2.1%の雇用が義務づけられていますが、法定雇用率算定に知的障害者も対象に加わって以降も本市における雇用実績はありません。このため、今後の採用へ向けた取り組みの第一歩として、実習の受入れを早急に実施するよう求めました。

「うつ病で精神科を受診している。急病になり救急車を呼んだが、救急隊が精神科に受診している旨を伝えた途端に病院側から受け入れを拒否され、受け入れ先を見つけるまでに何時間もかかった。診てもらいたいのは内科などの一般診療科であって精神科ではない、精神科にかかっているというだけでなぜこんな仕打ちを受けなければいけないのか」

妊婦のたらい回しがマスコミで大きく取り上げられ社会問題化しましたが、たらい回しの事例は何も妊婦に限らないという現実を市民相談を受ける中で知りました。
心の病に悩む人がふえており、例えばうつ病については、国民の約15人に1人がこれまでに罹患した経験があると言われ、早期の受診につなげるための支援体制構築の必要性が指摘をされています。しかし、専門医に受診したことが急病時に治療を受けられない事態を招いているとすれば大きな問題です。

昨年(平成19年)4月から半年間に船橋市内で救急車が出動したうち患者が精神科に受診していたケース465件について、受け入れ病院が見つかるまでの連絡回数を整理してみると、収容先の病院がみつかるまで4カ所以上の医療機関と交渉したケースが24件あり、なかには9回、10回と交渉したケースもあります。

正確を期して書きますと、医療機関が急患の受け入れができないという場合「入院患者の容態が急変してそちらの処置に担当医が手一杯」などという理由で断ることが多く、露骨な受け入れ拒否ということはないため、実態を正確に捉えることは難しいものがあります。

ただ、受入先が見つかるまで4回以上を要した24件についてみた場合、119番通報から受け入れ先が見つかって救急車が出発するまでの平均所要時間は約60分。最も時間がかかったケースでは98分かかった事例もあります。全体的に見ても「精神系疾患傷病者の医療機関受け入れについては、精神系疾患以外の救急業務より時間を要しているところが現状」(消防局長答弁)という実態が議会での質問で明らかになりました。

「高齢者虐待の防止・高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(高齢者虐待防止・養護者支援法)が施行されて1年半余り。この法施行により、虐待が疑われる場合の市町村への通報が義務づけられたことから、これまで把握されていなかった高齢者虐待が身近なところで数多く起こっている実態が明らかになりつつあります。
この間、船橋市内で虐待と認定された件数は18年度が72件、今年度は10月末現在33件、合計105件に上ります。このなかには直ちに生命に危険が及ぶと認められた事例も含まれます。

そもそも何故、虐待が起こるのでしょうか。

「皆さん、自分は虐待などするような人間ではないと考えているでしょう。でも、頑張っても頑張っても報われない努力を強いられるようになったとき、人は誰でも虐待に走る可能性があるのです」認知症の家族を抱える方の訴えがいまも耳にのこっています。

船橋市の事例でも、「親子、夫婦の力関係が逆転したことで、虐待者が過去からの鬱積していた感情を抑制できなくなった」「介護疲労と孤独感が虐待の一因となっている」「心理的要因が増加しており、介護者への抑圧された気持への支援が必要」 など、精神的に追いつめられて虐待に走るケースが多く見られます。

高齢者虐待は、少なくとも虐待者を悪者に仕立てて取り締まれば解決するといた簡単な問題ではなく、事態が深刻になる前に早期に発見・支援する体制の充実が急務です。

12月議会の一般質問では船橋市における虐待の具体的な内容、養護者が虐待に走る背景にはどのようなものがあるのか、緊急に養護者と被虐待者を分離する必要がある場合の対応など支援の現状について質すとともに、法律に規定されていない65歳未満への虐待防止、支援のための体制づくりを急ぐよう求めました。
高齢者虐待防止法は保護の対象となる高齢者を65歳以上としているため、65歳未満の被虐待者に対する保護をどのように行なってゆくかが大きな課題として残っています。

このため、DV防止法など既存の枠組みなどを活用して必要に応じて虐待防止、支援を早期に講じることができる仕組みづくりを、関係部署と連携して構築することを求めました。