つのだひでお(角田 秀穂)|衆議院議員|公明党
つのだひでお(角田 秀穂)|衆議院議員|公明党

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「10月以降、支援費の額が10%以上さがってます。お陰で借入金の償還資金がすっ飛びました」「いまの単価設定は、新規に事業をやろうとする法人のための単価設定になっていない。生産活動を行なうための設備投資の資金までは支援費ではでないんです」「これから福祉工場など障害者の就労の場を増やしてゆくためには行政の考え方を変えていくことが不可欠」。大西専務理事の口からは厳しい言葉が続く。ただ、その一方で「うちで働く障害者は半数以上が重度ですが、それでも仕事はあるんです。できるんです」「働いて給料をもらって、税金を納める。それを可能にするかどうかは、本人と家族と、そして行政の意識の問題なんです」と語る言葉に力がこもる。

『C・ネットふくい』で障害者が携わっている仕事は、極めて多岐にわたっている。▽コシヒカリや野菜の生産・販売▽ベーカリーの製造・販売▽平たねなし柿による干し柿の製造▽餅菓子の製造・販売▽天然塩の製造・販売▽花卉の販売▽クリーニング▽コインランドリー▽リネンサプライーなどなど。販路のひとつとして自前のコンビニなども展開している。
就労・雇用促進に向けてどのような仕組みを考えるべきなのか、根底にある考え方は(1)職の提供は食の提供、障碍者の生活自立支援の根本(2)個々に合った職業の提供は、個別支援計画の一部(3)顧客の満足する「ローコスト・満足福祉」の追求は、福祉関係者・施設経営者の責務(4)良質な職員の育成が障碍者の就労・雇用支援に不可欠ー。理念もさることながら、これだけ多くの就労の現場を抱えているだけあって、個々の特性に応じていかに安定的な就労に結びついてゆくかについてのノウハウを蓄積していることが何よりの強みだということを訪問して感じた。
また、特に(4)の「良質な職員の育成が障碍者の就労・雇用促進に不可欠」という点に関して「C・ネットふくい」の取り組みは参考になる。障害者の就労を支援するためこの世界に飛び込んできた職員は、少なくともその当初は誰にも負けない情熱を抱いていたはずだ。そうした情熱の炎も、自分の意見が組織の中で取り上げられず、逆に組織の側の論理を押しつけられていては、やがては萎えてしまう。職員のやる気が萎えてしまえば、結果として障害者の就労・雇用を促進する方向への推進力も萎えてしまう。どのような組織であれその盛衰の鍵を握るのは所詮は人だ。
この点に関して、「C・ネットふくい」は全職員に対して、現在の率直な思い、法人の将来への希望・不安、事業に対する提案等について意向調査を行い、その結果を踏まえて間髪入れずに改善策を講じている。この取り組みは一般の民間企業でも学ぶべきことだと思う。
「福祉だから、障害者だから」という言い訳だけをいい募っているだけでは、これから先も障害者の雇用は進まない。促進するための施策も重要であることは勿論だが、いかに優秀な人材を集めるか、その人材を活かすのかがこれからの重要な視点になってくるのは間違いない。
◇          ◇           ◇
冒頭の写真は、職員の自家用車を洗車・ワックスがけしている光景。「一般企業に就労した障害者がリストラされて、何か仕事はないかと考えて見つけた仕事です」(大西専務理事)。ボディに食い込んだ鉄粉を粘土で丁寧に落とし、ワックスがけまでして料金は3,000円也。1日2台で少なくとも2人分の人件費はでる。「ここは工業団地の一角にありますから、その立地を生かして各工場にも営業をかけて、仕事が途切れることはありません」。真剣に探せば仕事はどこにでもあるということ。

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「なぜ雇用と非雇用を区別しなければならないのか。

国は、生活介護の制度を造っておきながら、なぜ非雇用の人たちを生活介護の支援としないのか。それは、施設経営者が障碍者を金儲けの材料と考えているからでしょう。私は、障碍者の尊厳を無視した、金儲けの輩には同意も協調もしません。

(中略)私の今年の活動は、障碍者を出汁(ダシ)にしての金儲けの亡者と打算家との戦いであることをお知らせしておきます」(C・ネット福祉会 松永正昭会長『C・ネットは「非雇用はしない」について』から引用)

障害者自立支援法において、・施設を出て就職した者の割合が少ない(1%)・授産施設の工賃が低い(平均月額15,000円)・離職した場合の再チャレンジの受け皿がなく、就職を躊躇する傾向があるー等これまでの反省を踏まえ、一般企業(特例子会社を含む)への就労に結びつける前段階として新たに就労継続支援事業が創設された。

就労継続支援事業はさらに雇用型(A型)と非雇用型(B型)という2つのタイプに分けられる。このうち雇用型は文字通り雇用契約に基づく就労であり、労働関係法令の適用を受ける一般的な形態、労働者としての権利が保障された就労形態だ。一方、非雇用型は就労移行支援事業を受けたが一般企業や雇用型の就労に結びつかなかった者の就労形態であり、雇用契約に基づかず、賃金(工賃)も最低で月額3,000円程度と極めて低い。
ここで押さえておかなければいけないことは、障害者が一般企業への就労、または雇用型の事業に就けるかどうかは、本人の能力の問題ではなく、本人が暮らす地域にそれだけの受け皿が整っているのかどうかにかかっているということだ。障害者雇用の促進を目指して福井県内に通所授産11施設、福祉工場8施設を展開する社会福祉法人「コミュニティーネットワークふくい」(愛称C・ネットふくい)。

そもそもの設立母体は「手をつなぐ親の会」で、平成3年に通所授産施設「クリエートプラザ金津」を開設したのを皮切りに翌年には福祉工場「エフエフ福井」を創業。その後も矢継ぎ早に県内各地に授産施設、福祉工場を展開している。ちなみに福祉工場は全国に60数施設あるがそのうちの10施設が福井県内に集中している。
「親の会の会員は県内各地にいる。授産施設・福祉工場を各地域に造ることは当初からの構想でした。

ただ、15年で20カ所と急速に増やしていることに対応した職員の養成などは大変です」と語るのは『C・ネットふくい』の大西澄男専務理事。
現在、通所授産施設で205名、福祉工場で197名。企業への就職者86名への支援を含めると県内知的障碍者の57%の就労をサポートしている計算になる。
これだけの就労を支えるためには、それに見合った仕事がなければならいないことになる。それも単発ではなく持続性のある仕事を常に探し求めなければならない。この点について、「C・ネットふくい」の取り組みは非常に学ぶべきものが多いといえる。(続く)

制度の壁を乗り越えた先に広がる地平〜富山型デイサービスの現場で〜

”子どもから高齢者まで、障害のあるなしに関係なく一つ屋根の下で暮らせる”そんな共生社会の実現を目指す試みとして、平成15年から構造改革特区事業として実施されていたいわゆる「富山型デイサービス」(制度的には高齢者を対象とする介護保険の通所介護事業所でも知的障害者、障害児のデイサービス利用を可能にすること)が10月から全国どこでも実施できるようになった。当然、私の住む船橋でもやる気になればできるようになった。

富山型デイサービスは、平成5年富山赤十字病院に勤務していた3人の看護師が退職金を出し合って開設した『デイケアハウスこのゆびとーまれ』から始まった。現在のNPO法人「デイサービスこのゆびとーまれ」理事長惣万佳代子さんらが、”お年寄りがお年寄りらしく生きられる居場所”をつくりたいという”当たり前の動機”から行動を起こし、縦割り行政の壁、制度の壁と闘いながら、徐々に共感の輪を広げ、富山型デイサービスとして全国的な評価を得るまでの経緯は『このゆびとーまれの公式ページ』に詳しい。
たった3人から始まった富山型デイサービスが、どこでも実施可能な新たなスタンダードとなった。富山型デイサービスはこれから全国に広がってゆくのか。『このゆびとーまれ』の西村副理事長は「制度化されたことが本当に喜ぶべきことなのかどうか」とも語る。

制度の壁を乗り越えた先に広がる地平〜富山型デイサービスの現場で〜

このサービスの草分けとなった「このゆびとーまれ」を訪問した私自身の感想は、何と言っても自然な雰囲気。開放的な室内の片隅に椅子に腰掛け本のページをめくるおじいちゃんがいて、その傍らでおしゃべりしながら手作業をする子どもとおばあちゃんがいて、いっしょになって談笑するボランティアの学生がいて・・・。みなそれぞれに認知症や知的障害などハンデを負っているのだが、お年寄りから子どもまで障害のあるなしにかかわらず一つ屋根の下にいる、そんな空間が何とも自然で、そこに身を置く私自身も落ち着ける、いつまでもここに腰を落ち着けていたい気分になる(但し、私たちの応対をする間も西村副理事長はじめスタッフの方々は周囲への目配りを常に怠っていませんでした。即ち自然な空間を維持するためには多くの人手を必要とするということです。)

さて、今後こうした自然なかたちのデイサービスが全国的に広まってゆくのだろうか。そもそも富山型デイサービス発祥の地である富山市では今後の展開についてどのように分析しているのか。(障害者のデイサービスについては訪問した時点でもまだ混乱があり、行政としても正確なデータを示すことはできませんでした。この点についてはご容赦ください)
「富山型デイサービスを標榜する事業所は市内で30以上ありますが、ほとんどは介護保険(高齢者)のみの利用で、障害者を受け入れている施設は極めて限られています」とは富山市障害福祉課の説明。
「制度化の善し悪しはこれからの流れの中で見極めていかなければなりません。私たちは目の前のニーズに合わせていたらこうなったといこと」とは『このゆびとーまれ』の西村副理事長の弁。
制度の壁を乗り越えたといっても、事業所の経営を左右する肝心の制度は依然として縦割りのままだ。高齢者については介護保険、障害者については自立支援法に基づく報酬、障害児についてはレスパイト事業に対する助成といった具合で、こうした事業を永続させるために責任を持つセクションが少なくとも国には存在しない。また、”高齢者から子どもまで、障害のあるなしにかかわらず一つ屋根の下で”という形態でのサービス提供をするかどうどかは、事業主体の考え方次第でもある。
「私たちもこのかたちが決してベストだとは思っていません。高齢者だけのほうがよいという方はそちらに行けばよいし、要は利用者の選択の問題です」
ただ、そうした選択肢が身近にたくさんあることの意義は大きい。「誰もが一つ屋根の下で」という理念を持つ事業所が育つ環境づくりをこれからはそれぞれの地域が考えてゆかなければならない。

障害者自立支援法の全面施行を控えた8月14日、公明党は厚生労働大臣に対し、障害児のいる家庭と一般の子育て家庭との負担を公平にする観点から、通所・入所施設の利用に対する軽減措置の拡充などを求める緊急要望を行ないました。10月から障害児施設を含む全ての施設で原則利用料の1割負担と食費が課せられることに伴い、従来よりも保護者の負担が大幅に増えてしまうという不安の声を受け止めて緊急に申し入れたものですが、これに対して厚生労働省は同24日、地方自治体に対し通所施設に通う障害児(未就学)の負担を保育所の保育料並みとする新たな見解を提示しました。そこから全国の自治体では負担額の見直し作業に取りかかり、船橋でも検討の結果、保育料相当の負担額とすることを決めました。
緊急要望で「一般の子育て中の家庭の負担との公平性の観点から」として軽減を求めていたものが、具体的な形として「保育料相当」の負担額として示された、結果として当初より負担が軽減されたことは一定の評価をするものですが、ただ、一般の子育て世帯との公平という観点からはさらなる負担軽減措置が必要だとの思いで知的障害児通所施設「さざんか学園」の利用者負担について今議会で質問並びに提案を行ないました。
船橋では障害児通諸施設として、知的障害児通園施設「さざんか学園」、在宅肢体不自由児通園施設「簡易マザーズホーム(東・西)」、肢体不自由・知的障害児に指導を行なう「親子教室(3カ所)」を運営しているほか、市外の通所、入所施設を利用している障害児についても利用費助成を行っている。このほかに10月1日からは「第2さざんか学園」(法人立)が市内にオープンすることになっています。
このうち「さざんか学園」の利用者負担(第2さざんかも基本的に同じ)を巡っては、例えば市民税額14万1円以上28万円以下の世帯の場合、これまでの制度のもとでは月額7,300円であった利用者負担が「保育所の保育料並みとする」という考えに立った新たな利用料設定においても月額で25,691円と3倍以上の負担になってしまいます。「市の保育料と合わせました(ちなみに同じ収入階層の保育料は26,500円)。ほかの家庭の子育ての負担と同じレベルです」といわれても、保護者としては納得できません。そもそも保育所とは目的も内容も異なります。さらに、子育て世帯の負担の公平という観点からも、さざんか学園の利用料設定には大きな問題があります。以下はこの点を取り上げた今議会での質問要旨です。
『知的障害児通園施設「さざんか学園」の10月からの利用料について、4歳児以上の保育料に合わせるとのことだが、当然のことながら「さざんか学園」は保育所とは目的や内容が全くことなる。そのうえ、経済的負担という面でも一般子育て世帯との比較で考えた際、例えば保育所に子どもを2人以上預ける場合、子育ての経済的負担軽減のため、保育料は第2子は標準保育料の半額、第3子は標準保育料の10分の1となる。また、幼稚園に2人以上通わせる場合においても、同様の考え方から、就園児奨励補助金が第2子以降は増額して交付される。例えば市民税所得割額が18,601円以上135,000円以下の世帯の場合、第1子については56,900円の補助金額だが、これが第2子については126,000円、第3子以降については238,000円 となる。さざんか学園に通所している児童の兄弟が保育所に通っているという場合に保育料減額の規定が適用されるのか、また、兄弟が幼稚園に在園しているという場合、就園児奨励補助金の割り増し基準が適用されるのか、こうしたことが配慮されない、できないのであれば、結局障害児を育てる家庭の子育ての経済的負担という面でも極めて不公平だといわざるを得ない。
具体的にどうすればよいかを考えた場合、例えば、兄弟が保育所や幼稚園に通っている場合、兄弟全員が保育所に通っているものと見なして、あるいは全員が幼稚園に通っているものと見なして経済的負担に不公平が生じないよう利用料を設定するという方法も考えられなくはないが、事務作業が非常に煩雑になるうえ、保護者にも余計な手間を取らせることになり、現実的とはいえない。
そこで現実的な負担軽減方策を提案するものだが、まず1点目として、さざんか学園の利用料については、一律に保育所に2人以上預けた場合の2人目に適用される保育料、すなわち標準保育料の半額程度とすること。そのうえで、2点目として現実に3人以上の子どもをさざんか学園と保育所、幼稚園に通わせている世帯に対しては、それぞれの所管と連携を取って、障害児を育てるがゆえに過度の負担を強いられることのないよう負担軽減策を講ずること。以上のことを検討し、速やかに実施することを強く求める。』
保育所であれ幼稚園であれ第1子の負担を10とするならば、第2子は半分の5、第3子以降は1割の1、10:5:1の割合で子育ての負担軽減を図る。これは公明党が野党時代から強く主張し、推進してきた経緯があります。
子どもが障害を持つが故に不公平な負担を強いられるようなことがあれば、市町村レベルにおいてもまず我々がその是正に取り組む責任があります。
障害者自立支援法は、すべての障害者が必要なサービスを公平に利用して地域で生活できる基盤整備をめざすものであり、この理念自体には異論は少ないと思います。ただ、過重な負担を強いられ、その結果、サービスが利用できないという事態が生じては本末転倒です。こうしたことが起こらないよう法施行後も本来の目的に適った運用がなされているか、今後もしっかり検証してゆきます。

高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることを可能にするための地域密着型サービスの推進について、今議会で行なった質問とそれに対する答弁を以下にまとめます。
Q. 本市の整備計画では平成20年度の見込量として、認知症高齢者のグループホーム419床、小規模特養29床としているが、確保できるのか。また、地域密着型特定施設について今回の計画にはないが、今後の整備についてはどう考えているのか。
A. 認知症高齢者グループホームについては、今年度から20年度にかけて毎年公募を行ない、適正な審査をし、選定する。整備に当たっては見込量に達成させるということだけでなく、整備地域についても適正な配置となるよう取り組んでゆく。地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、いわゆる小規模特養については、今年度公募を実施する予定である。 また、地域密着型特定施設については、国が示した参酌標準を基に検討した結果、認知症高齢者グループホームや小規模特養の整備が優先急務のため、次期計画に向けての検討課題とし、今回計画には見込んでいない。
Q. 認知症対応型通所介護と小規模多機能型居宅介護の整備見通しについてはどのように考えているのか。
A. これらについても市のホームページで申請方法についてのお知らせを掲載するなど、計画した見込量に向けて整備を進めている。
Q. 地域密着型サービスの整備と合わせ、これらサービス利用者と、地域との連携をいかに図ってゆくかも大きな課題と考えるが、この点についてはどのように取り組んでゆく考えなのか。
A. 質問のとおり地域密着型サービスの利用者と、住み慣れた地域との交流を図っていくことは非常に大切なことである。小規模多機能型居宅介護や認知症高齢者グループホームなどは国の省令により運営推進会議の設置が義務づけられている。これは地域との連携等を目的としたもので、利用者、利用者の家族、地域住民の代表者、地域包括支援センター職員、事業について知見を有する者等に構成されている。今後はこの会議を、地域交流を図るうえで活用してゆく。

9月議会詳報(1)〜税制改正に対応した高齢者在宅福祉〜

まず、上のグラフの説明から。税制改正に伴って年金生活の高齢者世帯の可処分所得が平成18年度から20年度までどのように推移するかを試算したもの。横軸の数字は年金収入額(円)、縦軸の数字は年金収入額から税金と社会保険料を払った後に手元に残る可処分所得額(円)を示しています。
試算の前提としたケースは(1)今年1月1日時点で66歳以上で配偶者(70歳未満、収入なし)と2人暮らし、収入は年金のみ、住まいは賃貸住宅(2)税金は住民税と所得税、社会保険料は国民健康保険料と介護保険料。
税制改正に伴って特に65歳以上の高齢者の方については、昨年度までは市県民税が非課税であったものが、今年度から課税されるケースがかなり発生したことで、各地で混乱が生じているのは報道などでご案内の通りです。今回の税制改正は世界に類を見ないスピードで進む高齢化・少子化を背景に、将来にわたって社会保障制度を維持してゆくためには、現役世代のみに負担を押しつけるには限界がある。このため負担できる高齢者にも負担をお願いしたもので、今回の老年者控除、公的年金控除の見直しによる増収分は、安定した年金制度確立のための財源として役立てることになっています。ただ、これはあくまでも負担できる方に負担していただくということが大前提であり、税制改正に伴って本来負担できない方にも重い負担を強いるようなことが生じた場合には、国においても地方においても速やかに対応策を講じるべきです。9月議会で取り上げた高齢者の在宅福祉サービスもこうした視点から質問したものです。税制改正に伴う全般的な負担増の問題については改めて吟味するとして、ここでは今回質問した在宅福祉サービスに絞って論じたいと思います。

船橋市では昨年度まで住民税(市県民税)本人非課税の方に対して介護用品(おむつ)支給事業を実施していました。対象者には月額6,250円を限度に介護用品を支給するもので、17年度の利用実績は625人。これは船橋の実施している高齢者在宅福祉サービスのなかでも緊急通報装置貸与事業に次いで利用者が多い事業、即ち必要性の高い事業です。上のグラフでは一番右の収入(267万円)の世帯のみが市県民税課税で、それより左はすべて17年度は非課税です。したがって介護用品(おむつ)支給事業の対象でした。
税制改正により、17年度までは本人非課税で介護用品の支給を受けられていた方が、課税になってしまうことによってこのサービスを受けられなくなってしまうことがないよう船橋では支給の要件を見直し、平成18年度は住民税の課税要件を12,000円以下の方まで対象とする。19年度は25,000円以下、20年度は37,000円以下と段階的に緩和することとしました。税制改正によって従来、福祉サービスを受けられていた方が受けられなくなてしまうようなことがないよう、支給要件を見直したことは評価できます。ただ、この要件が本当に妥当なのかどうかを検討した結果、上のグラフに矢印で示しましたが、船橋の設定した要件では昨年度までは対象となった方が18年度、19年度には対象とならないというケースが生じてしまいます。しかもグラフを見ていただければ分かる通り、収入は多いにもかかわらず、可処分所得はより収入の低い世帯よりも少ない、すなわち可処分所得が逆転している層が福祉サービスも受けられなくなってしまいます(可処分所得の逆転は公的年金控除の縮小と合計所得金額125万円以下に対する非課税措置の廃止を同時に実施した結果生じたものですが、詳しくは全般的な負担増のなかで述べたいと思います)。
いずれにしても船橋の設定した税額要件では不公平が生じるということで、要件の大幅な緩和が必要だと主張して行政の考えを質しました。これに対する答弁は、「税制改正に伴い、引続き支給対象になるように所得要件を段階的に緩和する措置を講じたところ。また、新規申請者についても、継続利用者との均衡がはかれるよう対応したところ」としたうえで、「しかしながら、指摘されたように当初の趣旨が十分に達成できないようなケースがあれば、現行の制度を検証のうえ、追加的な対応を行なってゆきたい」と、現行の要件について見直してゆく考えを示しました。

今月4日から26日までの会期で船橋市議会(9月議会)が開かれています。今日(12日)は私の一般質問の日でした。

今回の一般質問では、(1)介護保険と高齢者福祉(2)障害者の自立支援ーについて取り上げ、(1)の介護保険と高齢者福祉では、介護予防への本市の取り組みの現状、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるための地域密着型サービスの本市における取り組み、税制改正に対応した在宅福祉サービスのあり方について、(2)の障害者の自立支援については、障害者自立支援法で新たに導入された障害程度区分認定の適正確保、就労支援への取り組み、子育て世帯の負担の公平性を考えた際の知的障害児通園施設「さざんか学園」の利用料のあり方ーについて質問並びに提案を行ないました。

以下は今回の質問・提案の要旨です。なお、質問や提案の背景、答弁等の詳細についてはこれから順次補足してゆきます。

(1)介護保険と高齢者福祉

■介護予防
本市における、新予防給付及び地域支援事業の介護予防事業の実施状況はどのようになっているのか。また、地域包括支援センターの業務実績はどうか、来年度以降の体制整備についてはどのように考えているのか。

■地域密着型サービス
本市の整備計画では平成20年度の見込量として、認知症高齢者グループホーム419床、小規模特養29床としているが確保できるのか。また、地域密着型特定施設について今回の計画にはないが、今後の整備についてどのように考えているのか。地域密着型サービスの整備と合わせ、これらサービス利用者と、地域との連携という課題にはどのように取り組んでゆくのか。

■税制改正に対応した在宅福祉サービスのあり方
在宅高齢者の福祉サービスについて、今回の税制改正により従来はサービスを利用できた方が利用できなくなるということがないよう、支給要件等について配慮がなされていることは評価するが、ひとつだけ疑問に思うことがあるので質問する。在宅福祉サービスのメニューのひとつである介護用品(おむつ)支給事業について、税制改正後の新たな基準では昨年度までならば新規に支給を受けられた方が、今年度以降は受けられなくなるケースが懸念されるが、このことについて市としてはどのように考えているのか。

(2)障害者の自立支援

■障害程度区分認定の適正確保
障害程度区分の認定作業において、2次判定で上位区分に変更された割合はどの程度か、また、変更されたケースでは、どのような要因にによって変更されたのか。認定が担当者によって差異が生じないよう、どのような対応を図っているのか。2次判定における程度区分変更について具体的指針が必要とされるが、本市ではどのように取り組んでゆく考えなのか。

■就労支援
障害者自立支援法により、本市の障害者に対する就労支援はこれまでと比べて具体的にどのように変るのか伺いたい。

■さざんか学園の利用料
知的障害児通園施設「さざんか学園」の10月からの利用料について、4歳児以上の保育料に合わせるとのことだが、当然のことながら「さざんか学園」は保育所とは目的や内容が全くことなる。そのうえ、経済的負担という面でも一般子育て世帯との比較で考えた際、例えば保育所に子どもを2人以上預ける場合、子育ての経済的負担軽減のため、保育料は第2子は標準保育料の半額、第3子は標準保育料の10分の1となる。また、幼稚園に2人以上通わせる場合においても、同様の考え方から、就園児奨励補助金が第2子以降は増額して交付される。例えば市民税所得割額が18,601円以上135,000円以下の世帯の場合、第1子については56,900円の補助金額だが、これが第2子については126,000円、第3子以降については238,000円 となる。さざんか学園に通所している児童の兄弟が保育所に通っているという場合に保育料減額の規定が適用されるのか、また、兄弟が幼稚園に在園しているという場合、就園児奨励補助金の割り増し基準が適用されるのか、こうしたことが配慮されない、できないのであれば、結局障害児を育てる家庭の子育ての経済的負担という面でも極めて不公平だといわざるを得ない。

具体的にどうすればよいかを考えた場合、例えば、兄弟が保育所や幼稚園に通っている場合、兄弟全員が保育所に通っているものと見なして、あるいは全員が幼稚園に通っているものと見なして経済的負担に不公平が生じないよう利用料を設定するという方法も考えられなくはないが、事務作業が非常に煩雑になるうえ、保護者にも余計な手間を取らせることになり、現実的とはいえない。

そこで現実的な負担軽減方策を提案するものだが、まず1点目として、さざんか学園の利用料については、一律に保育所に2人以上預けた場合の2人目に適用される保育料、すなわち標準保育料の半額程度とすること。そのうえで、2点目として現実に3人以上の子どもをさざんか学園と保育所、幼稚園に通わせている世帯に対しては、それぞれの所管と連携を取って、障害児を育てるがゆえに過度の負担を強いられることのないよう負担軽減策を講ずること。以上のことを検討し、速やかに実施することを強く求める。