障害者の主要な生活の本拠のひとつにグループホームがあります。
かつては、まちなかにある既存の戸建て住宅を活用してのグループホームの整備が進んでいましたが、認知症高齢者グループホームの火災で入居者が多数命を落とすという事故が発生したことなどを契機に、安全確保の観点から、グループホームを建築基準法上の住宅ではなく寄宿舎として取り扱うことが強く求められるようになりました。
この結果、既存の戸建て住宅を障害者グループホームに転用しようとした場合、基準をクリアするためには大規模な改修が必要になることから、ここ数年、船橋市においてもグループホームの整備が殆ど進まない状況が続いていました。
何とかならないものかと、私自身、3年前から議会で取り上げてきましたが、法律の規制という壁の前に、有効な打開策が見いだせずにいたところ、今年に入り、この問題が国会でも取り上げられました。規制の見直しを迫る質問に対して国土交通大臣も見直しを約束したとことから、事態は大きく動き出し、船橋市でもグループホームの整備が進むものと期待されるのですが、行政側の対応が遅れているのではないかとの思いから今議会では関係部局による連携の強化を訴えました。
まず国土交通大臣の答弁を改めて記しておきます。「来年四月から原則としてスプリンクラーを設置することを義務付けたということを受けて、スプリンクラー設備が設けられた場合、あるいは規模が小さくて そのままぱっと屋外に逃げることができるというような場合、この二点、特に二点でありますけれども、この場合には間仕切り壁の防火対策の規制を緩和すると いうことを本格的に検討したい」(平成26年3月6日参院予算委員会)
建築基準法と消防法の規制の合理化、建築物の構造とスプリンクラー設置という、それぞれ別個に行われていた安全確保へのアプローチを改め、国土交通省と消防庁が連携して規制の合理化を図ろうというもので、この方針に基づきスプリンクラー等が設置されている場合と、小規模で火災発生初期の段階で避難できる場合には一定の要件のもとにこれまで必要とされていた間仕切り壁の大規模な改修を要しないとすることなどを内容とする建築基準法施行令の改正が行われました。
上の表は特にグループホームの整備を進めるうえで壁となっていた間仕切り壁とスプリンクラー等の設備に関する建築基準法と消防法の規制の合理化の内容を私なりに整理したものです。この表からも、地域で暮らし続けることを可能にするグループホーム整備の可能性は確実に広がったと思うのですが、船橋市においてそれが現実になるためには関係部局の一層の連携強化が不可欠だとの思いから以下のような質問をしました。
つのだ:消防局に伺う。
消防法施行令の改正で平成27年4月から障害者グループホームを含む社会福祉施設について、現在、延べ面積275㎡以上の施設に設置が義務づけられているスプリンクラーを延べ面積に関わらず全ての施設に設置することが義務づけらるが、例外として介助がなければ避難できない者が多数を占めない延べ面積275㎡未満の施設についてはスプリンクラーの設置は必要ないとさいれている。この例外となる施設の具体的な要件について説明頂きたい。
次に建築部に伺う。
建築基準法施行令の改正によって、障害者グループホームを含む寄宿舎について、スプリンクラーを設置した部分と、スプリンクラー未設置であっても防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の間仕切り壁については、これまで準耐火構造としなければならないとされていたものを、準耐火構造とすることを要しないと改められた。既存の戸建て住宅のグループホーム転用への可能性が広がったと思うが、このうち防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分とは、具体的にどのような建築物なのか、解説頂きたい。
答弁(消防局):消防法では、防火対象物について、それぞれの用途により項別に区分している。障害者グループホームは、消防法施行令別表第一により(6)項ロまたは(6)項ハの用途に分類する。
(6)項ハのスプリンクラー設置については従来通り(延べ面積275㎡以上に設置義務)。(6)項ロの施設は延べ面積にかかわらずスプリンクラーの設置が義務づけられる。ただし、(6)項ロでも、入所者のうち、一人で移動出来る方、避難の方向を教えて理解できる方や火災の危険を認識できる方などが多数入所する施設については従来通り275㎡以上である。
答弁(建築部):平成26年8月22日国土交通大臣告示が示された。
1点目は居室の床面積の合計が100㎡以下の階などで、2点目として各居室に住宅用防災機器又は自動火災報知設備等が設けられていること。3点目は各居室から直接屋外への出口等に歩行距離8m以内で避難でき、かつ各居室と廊下とが壁と自動的に閉まる扉で区画されていることー以上の3点を満たしている場合には、防火上支障がない部分として準耐火構造の間仕切り壁を設けなくてもよいとされた。
つのだ:障害者グループホームについて、消防法の規制からは、市内にある施設のうち8割近くは従来通りの取り扱いで変更の必要はないと思う。
一方、建築基準法の規制からも既存施設の多くは適法となると思う。従って新たにグループホームを開設するにしても、既存の戸建て住宅等を活用出来る余地がかなり広がったものと思う。
いちいち、思うというのは今に至ってなお正確なところを誰も把握していないからだ。即ち問題は、いま説明頂いたことが、福祉部局と共有されていないということだ。特に建築基準法施行令の改正は、既に動き始めているにも関わらず建築部と福祉サービス部の解釈が全く違っている。
グループホーム整備の窓口となるのは福祉サービス部だ。その窓口の職員が、グループホームをつくるにはどのような要件を満たす必要があるのか、満足に説明も出来ないようでは、本市のグループホーム整備は進むわけがない。
一年前の本会議での答弁では、本市でも障害者グループホームの整備の必要性を認めたうえで「市としてどのように最善の対応がとれるのか、関係部局で真剣に検討する」と答えたではないか。関係部局が連携して考えてないからこうなっているのではないではないか。原因をよくよく考えたうえで、関係部局が連携して市民要望にしっかり対応して頂きたいと要望する。