小中学校に5万人?障害に対する現場の理解を
場面緘黙症とは、家庭などでは普通に話すことができるのに、学校や幼稚園といったある特定の場面、状況では全く話すことができなくなるという障害です。具体的には、いざ声を出そうとしても喉が詰まっているような感じになり、頭が真っ白になってしゃべれなくなる。しゃべること以外にも、いろいろなことに不安感を持ちやすく、周りの目が気になって体が固まって、その場から動けなくなったり、動けても、手が震えたり、思うように行動ができなくなる。
過去において、このような全く口をきけなくなってしまうことや硬直して動けなくなってしまう場面緘黙症は、極度の人見知りであるとか、放っておいてもいつかは直るだろうということで片づけられ、この障害に対する理解や支援については余り顧みられてきませんでした。
緘黙は基本的に家の外で症状が出るので、親や家族は気づきにくく、ただのおとなしい子として放置されてしまうことが少なくありません。
場面緘黙症の子供はどの程度いるのか。発症の頻度について国内でも幾つかの調査がありますが、これもかなりばらつきがありますが、おおむね〇・二%から〇・五%ぐらいと推計されているようです。海外では〇・七%とする調査もありますが、仮に出現率を〇・五%とすると、今、小学校に三万三千人、中学校に一万七千人余り在籍する計算になります。
これに、小中学校の情緒障害を対象とした特別支援教室や通級指導教室で支援を受けている子供の数を重ね合わせますと、実際に教育現場などで支援を受けているのは全体の一%ぐらいしかいない。これは、発現率を〇・二%にしても、二、三%ぐらいしかいないというような現状が推測されます。
私のもとにも場面緘黙症で悩み苦しんでいる方からたくさん声が寄せられており、この問題で苦しんでいる方はかなり多いのではないだろうかという印象を抱いています。
何の支援も行われていない大部分の子供たちはどのような状況に置かれているのか。ほかの子供と同じように話すことができず、周囲からも理解のない対応、例えば友達からのいじめ、さらには、教師も理解がないため、しゃべることを強要され、叱られたりする中で、自尊心の低下を招き、無力感や不安を引きずったまま、不登校や引きこもりになってしまうというケースもあります。
また、無理解による嫌がらせを受けながらも無理して学校に通い続けた結果、緘黙症を引きずったまま、うつ病を発症するなど、二次障害に苦しんでいる方もいます。
教育や保健福祉の分野での支援策充実が急務だとの思いから、この障害への現場の理解を深めることなどを求めました。
【文部科学省への質疑】(予算委員会分科会=2015年3月10日)
つのだ:場面緘黙症の子供への学校現場での支援について質問する。まず、場面緘黙症の子供についての実態をどのように把握しているのか。
答弁:場面緘黙症あるいは選択性緘黙と言われることで苦しんでいる子たちがいることは把握しているが、それに特化した形で数値等を把握はしていない。
つのだ:発達障害を含めて気になる子供の中で、例えば多動など目立つ子と、場面緘黙症の子供のように目立たない子の大きく二つに分けられると思う。このうち、目立たない子は、目が向けられない傾向もあるのではないか。
早期の支援のためには、その前提となる気づきができるかどうかが大事になってくる。特に場面緘黙は、家庭では普通に会話ができる、学校など特定の場面で話ができなくなるので、当然のことながら、気づく人も限られる。学校現場の教員でなければ気づくのが難しい。
そうであるからこそ、場面緘黙症に対する教職員の理解を深める取り組みと適切な支援をぜひとも進めていただきたいと思うが、いかがか。
答弁:知識等を持っている先生方が必要だという点に関しては、この場面緘黙症、選択性緘黙を含む障害ごとの特性や教育的対応等につきまして、育支援資料というものを作成している。ここではこの点も取り上げているものでございます。これを各学校等における児童生徒の実態把握や支援方策の検討においても参考としていただくという観点から、教育委員会等への配付という方法と、ウエブサイトへの掲載により、周知を図っている。
ぜひとも積極的に利用いただくとともに、引き続き、各学校において、こうした障害をお持ちのお子さんに対する全校的な支援体制の確立をさらに進めたい。
【厚生労働省への質疑】(厚生労働委員会=2015年3月25日)
つのだ:厚生労働省としては、場面緘黙症、選択制緘黙の子供の実態について把握しているか。
答弁:厚生労働省として、緘黙児の実態を把握している状況にはないので、今後、どのような手法であればこの実態を把握していくことが可能なのかという点も含めて研究をしてまいりたい。
つのだ:この障害に苦しんでいる多くの子供に適切な支援が講じられるよう、気になる子の早期の気づきと支援の充実の中で、ぜひとも場面緘黙症の子供についても注意を払っていただきたい。
具体的に何ができるかを考えた場合、例えば三歳児健診の機会に、意識して場面緘黙症を拾い上げることができるようにする。緘黙児の約七割に発達障害が認められるという報告もあり、言葉のおくれや手足の動作のぎこちなさなどのサインを示すことも多い。健診に携わる医師や看護師、保健師等への啓発を進め、保護者への相談や、親子教室などで適切なアドバイスや支援に結びつくよう、体制の整備を進めていただきたい。
さらに、保育所や幼稚園、さらには認定こども園など、幼児期にかかわる保健師、保育士、幼稚園教諭の理解と支援のために、専門家による巡回相談で適切なアドバイスが行われるよう、まずは国立障害者リハビリテーションセンターでの研修等に場面緘黙症についても取り入れることを求めたいと思うが、この提案も含めて、見解を伺いたい。
答弁:支援をしていただく方の認識を高めていくということは大変重要な課題だと考えている。今考えておりますのは、指摘いただいたように、巡回支援専門員の研修として、これは国が実施する研修として、国立障害者リハビリテーションセンターにおいて研修を実施しているが、この研修において緘黙児をテーマとするような講義は実施してきていなかったが、来年度の研修から緘黙児を研修のテーマに取り入れて、理解が広がるよう努めてまいりたい。
つのだ ひでお(角田 秀穂)
略歴
1961年3月 東京都葛飾区生まれ。
創価大学法学部卒業。
上下水道の専門紙・水道産業新聞社編集部次長を経て、1999年から船橋市議会議員を4期、2014年から2017年まで衆議院議員を1期務める。2021年10月2期目当選。
社会保険労務士。