試行錯誤しながらなんとか組み上げたホームページを、視覚障害者のための音声読み上げブラウザ「IBMホームページリーダー(ver.3.01)」で読み上げてみた。
結論からいうと、このウェブログはアクセシビリティの面からも良い。
視覚障害者にとっても利用しやすいホームページとは、ブラウザが見たまんまに読み上げてくれる、健常者と同じ情報を得ることができる、とうことで、その意味でこのウェブログは良好なホームページ作りを支援してくれると思う。テンプレートの構成も本文が左に(先に)きてサイドバーが右という今の構成が使い勝手が良いようだ。後は画像を含む記事を投稿する際、どのような画像なのか分かりやすいaltテキストをつけるよう配慮すれば、誰にとっても分かりやすいホームページになると思う。
アクセシビリティに特に配慮しなければならないのもののひとつが行政のホームページだが、この点について、船橋市のホームページのアクセシビリティ向上について昨年(05年)3月議会で取り上げ、改善を要望した。
“いうまでもなく、インターネットの普及率はこの5年ほどの間に目覚しく向上した。家庭にいながらにして必要な情報を得ることができるインターネットの普及は、特に障害者や高齢者など、外出が困難な人たちにとって社会参加の機会の増大など、これまでにない利便をもたらすことが期待されるが、その一方で、アクセシビリティの確保、いつでもだれでもが利用しやすいホームページ、ウェブコンテンツづくりの取り組みは、大きく立ち遅れている。
今後、市民生活に密接にかかわる行政のホームページのアクセシビリティ向上は重要な課題だが、本市のホームページを見ると例えば、トップページのトピックスの欄に、昨年末からことし初めにかけて、交通バリアフリー基本構想案に対する意見を募集する記事が掲載されていた。構想案に対する意見は、電子メールでも受け付ており、そのために封筒の画像が置かれていたが、音声読み上げブラウザは画像を無視するため、視覚障害者はそこから意見メールを送れることがわからない。
この場合、画像に「ご意見のメールはこちらから」という代替テキストをつけておけば、視覚障害者もソフトを使ってメールを送信することが可能であった。行政のホームページは、今や障害者や高齢者など、移動制約者にとって貴重な情報源であるにとどまらず、行政に参画するための欠かせない道具となっている。その視点に立ったホームページづくりが今後ますます重要になってくる。”
概略、以上のような話をしたうえで、ではどうすれば、よりよいホームページができるかという点について、何よりも大切なことは実際に利用している市民の声に対して聞く耳を持つことだと主張した。
ウェブページのアクセシビリティ向上のため国においてもJIS基準を制定しているが、この基準に準拠してさえいれば、市民にとって利用しやすいホームページが作れるのかといえば、決してそうは思わない。議会で取り上げたことは主に視覚障害者にとっての利用のしやすさという観点からの質問だったが、視覚障害者にとっては、1ページにできるだけ情報を盛り込んでくれた方が利用しやすい、つまり行間を詰めて、できるだけ1ページの文書をふやした方がよい。
これに対して身体障害者、特に上肢障害者にとっては、リンクされた次のページに進むためには、行間を広くとってもらった方がポインターを合わせる上で利用しやすい。つまり、1ページの文章の量は少ない方がよいという双方矛盾する要求がある。
話は少しそれるかもしれないが、車椅子と視覚障害者の歩み寄りの2センチという言葉がある。
歩道の段差は車いすの利用者にとってはない方がよいのだけれども、視覚障害者にとっては、段差がなければ車道との境界が識別できなくなるため、かえって危険となる。双方矛盾する要求を満たしたユニバーサルデザインを考えたうえで国では車道と歩道の境界部分の段差は2センチという基準を定めている。
しかしながら、実際には、車いす利用者の側にとっては、2センチのギャップは絶望的なバリアになることもある。船橋市では、視覚障害者、身体障害者双方の意見を聞くことによって、歩車道境界のギャップは1センチでも可能だとの結論を得て、これを船橋のバリアフリーの標準とすることにした。
市民サービスの向上は何よりも市民の声に謙虚に耳を傾けることから始まる。
「ITを使った施策というのは、意外なほどお金がかからずに、さまざまな政策が組めるというふうに考えておりまして、職員にもできるだけこういった施策に取り組んでいただくようにという形で呼びかけてまいりました。やっと今芽が出てきたというふうに考えております。(中略)システム構築に関して検討中ですというようにあいまいな答えにとどまるのではなくて、むしろ積極的に導入を前提として、ユーザーサイドに立った前向きな提案を受け付けていくということが、本当に効果的なシステムづくりに必要ではないか」
これは、ITを活用した防犯・防災システムの構築について議会で取り上げた(05年6月議会)際の助役の答弁だが、全く同感だ。市民サービスの充実はお金をかければ良いというものではない。市民の声を聞くことこそが大切で、これは全てに通じて言えることだと思っている。
ちなみに船橋市のホームページ制作は悲しくなるほどにお金をかけていない。それでも職員の努力もあって(少なくともトップページの)アクセシビリティは格段に向上している。これでよいのだと思う。
つのだ ひでお(角田 秀穂)
略歴
1961年3月 東京都葛飾区生まれ。
創価大学法学部卒業。
上下水道の専門紙・水道産業新聞社編集部次長を経て、1999年から船橋市議会議員を4期、2014年から2017年まで衆議院議員を1期務める。2021年10月2期目当選。
社会保険労務士。