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「基本的に障害をもつ子どもの就学先について、教育委員会と保護者の考え方が対立するということはありません」
メモを取る手を止め、しばし頭の中で何とか考え方を整理しようと試みた。「私の質問の仕方が悪かったのか?」「船橋では3分の1の保護者が就学指導委員会の答申を受け入れていない」「かつて教育委員会の幹部と意見交換した際、『船橋のやり方が本人のためを考えた際、最もいいんです。』と語っていた」「しかし、船橋の対応が必ずしも最善とは思えない」「本人のためにどちらが本当によいのか?それは理屈ではない。本人の生き生きとした表情がこの問題に対する回答を雄弁に物語っている」「教職員やそれをサポートする人材の配置が特に手厚い訳ではない。もちろん教員の資質がどうのとう問題でもない。一体何が違うというのか?」
あれやこれやと考えを巡らせている場所は、大阪府枚方市の公立小学校の校長室(注=冒頭の写真は本文とはほとんど関係ありません。枚方市では全小中学校にAEDを配備しているというお話を伺い撮影した一コマです)。
伺った小学校は早くから養護学級が設置されている学校だが、実はこの学校の養護学級に在籍する児童の一人は、千葉県内の小学校に在籍していたMちゃん。親の仕事の関係で枚方市に引っ越しっていったのだが、引っ越し先の教育環境が極めて良いとの便りを聞いて、自分の目で確かめたいと思い、教育現場を訪問させていただいた。校長先生は「なぜうちのようなごく当たり前の学校に?」と、いささか当惑されたご様子だったが、少なくとも私にとっては大違いなのだ。

何が違うのかを伺った話をもとに整理してみると・・・

□全ての小中学校に特殊学級(大阪では養護学級)が設置されているか
□こどもの就学指導に際しては、保護者の意向を最大限に尊重しているか
□「ともに学びともに育つ」という考えに立ったカリキュラムが作成されているか
□全ての教職員が在籍する障害児の名前を知っているか
□学区内で養護学校に通うこどもやその保護者を行事に招待したり、定期的に交流する機会を設けているか
□勉強もちゃんと教えているか
□部活にも参加できるか

要するに上のようなチェックリストの全ての項目にチェックが入るのが枚方市ということになる。枚方に限らず、大阪府の場合どこも大体同じ結果になる(大阪府全域の養護学級設置率は平成18年5月現在小学校97.6%、中学校97.8%にのぼる)。
人口約40万人の枚方市には公立の小学校が45校、中学校は19校あるが、このうち特殊学級(大阪では養護学級という)の設置率は平成17年度で小学校97.8%、中学94.7%。今年度(18年度)は残る小学校、中学校各1校に特殊学級が設置され、障害の有無にかかわらず地元の学校で受け入れる体制が整った。
こどもの就学指導については、いま現在、幼稚園、保育園に教育委員会の担当者が訪問してこどもの実態の把握をおこなっているところで、次の段階として9月以降、保護者との面接を行ない、意向を聞きながらどのような就学先がよいかの話し合いを行なう。その後も保護者からの要請があれば随時面接を行ない、12月頃に最終的な就学先が決定する。あくまでも「保護者の意向に沿った」就学先だ。
伺った小学校でも感じたことだが、養護学級の担任だけでなく学校全体で障害児の教育に関わっていることが当たり前になっている。「ほんとうにみんなが声をかけてくれるんです」とはお母さんの弁。特学のこどもの教育は特学の担任の仕事という考えでは、本当に必要な教育的な支援はできないし、教師自身も行き詰まってしまう。「授業でも、この子には難しいかなというところは、色々やり方を工夫してくれます」。生活習慣の獲得とともに、基礎的な学力の養成にも重点をおいた指導が行なわれており、こちらにきてから学力も格段に向上したという。ちなみにMちゃんの所属しているクラブはダンス部。
この学校の場合、学区内で養護学校に通っている子どもや保護者に対しても、運動会などの行事に招待しているほか、年2回養護学校の子どもや保護者も交えてのフレンズ交流会とう催しを開催して交流を深めている。この交流会には小学校の全教員も参加しており、小学校に在籍している、いないに関わらず地域にいる子どもをみんなが把握している。
これまで書いてきたことは、一番目の特殊学級の設置以外は全て「できる」「できない」のレベルの話ではなく「やる」か「やらない」かのレベル、お金をかけずともやる気になればできる話だ。
ノーマライゼーションの実現、『障害の有無にかかわらず、ともに人格や個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会』という理念の実現は、ひとえに教育の現場がどう対応するかにかかっている。それなくして障害者の自立は絵に描いた餅だ。
当日、参観させて頂いたのは通常学級での国語の授業。教室の前に出てみんなにお手本を見せ、拍手を浴びるMちゃんはクラスのヒーローだった。

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