本年6月議会で主張した(国民健康保険加入者の)出産育児一時金の全額貸付が、10月1日からの出産育児一時金引き上げ(30万円から35万円)に合わせて実施されることになった。これまでは予定日まで1ヶ月を切った場合や妊娠4ヶ月以上で医療機関に支払いの必要が生じた場合に出産育児一時金の9割(=27万円)を限度に貸し付けていたものが、1度の手続きで全額(10月からは35万円)の貸付が受けられるようになった。
(参考=この問題を議会で取り上げた議事録)(06年)6月議会
出産育児一時金を使いやすくするための方策として保険者によっては、貸し付け制度の代わりに受領委任払い制度をとっているところも増えている。国も受領委任払い制度の導入を保険者に対して促しており、船橋市も来年度から受領委任払い制度を導入する方針だ。受領委任払いは、事前に協定を結んだ病院等で出産する場合、出産育児一時金を保険者から直接病院等へ支払うもので、本人は一時金の金額を上回る部分だけを支払えばよいというもので、それはそれで負担の軽減に一定の効果がある。
ただ、そもそも出産育児一時金は、分娩費のみに使途が限定されているものではないこと、また、出産は一般の疾病と異なり利用される病院が例えば里帰り出産のように市域、県域を超えて広範囲に及ぶことから、受領委任払い制度が利用できないケースも多く考えられ、その場合は結局、病院等への支払いを一旦は自前で工面しなければならないこと、さらには、手続きに要する手間は変らないことなどを考えた際、貸付制度を見直すことにより、出産前に全額の貸付を受けられるようになれば、そちらの方が使い勝手がよい、負担感の軽減のためにはより効果的であるとの考えから貸し付け制度の充実を提案した。
調べた範囲では受領委任払いを行なっているところは貸付については行なっていないところが多い。どちらの制度が優れているかを論ずるよりも、利用者の使い勝手の点から考えれば受領委任払いと全額貸付の2本立てで運用するのが正解だと思う。大切なことはより多くの市民のニーズに応えられる制度にできるか否かだ。
事例はそれほど多くないものの、貸付と受領委任の2本立てでやっている自治体の状況をみてみると、例えば、船橋と同じ中核市のO市の場合、平成17年度の総給付件数576件に対して受領委任払い利用が218件、これに対して貸し付け制度の利用は5件と圧倒的に受領委任払いの利用が多い。しかしながら船橋と同じ首都圏に位置するT市においては、17年度の総給付件数349件に対して受領委任払い25件、貸し付け制度の利用は12件となっており、両制度の利用実績にそれほど大きな差はない。地域によって利用状況にはかなりの差があるようだ。また、これら2市の貸し付け制度の限度額は8割となっている。全額貸付であればさらに利用は伸びるのではないだろうか。
こうしたことも踏まえ、船橋においては受領委任払いを導入した後も、貸付制度は残す、即ち2本立てで運用し、その利用状況をよく見極めることを求めている。
つのだ ひでお(角田 秀穂)
略歴
1961年3月 東京都葛飾区生まれ。
創価大学法学部卒業。
上下水道の専門紙・水道産業新聞社編集部次長を経て、1999年から船橋市議会議員を4期、2014年から2017年まで衆議院議員を1期務める。2021年10月2期目当選。
社会保険労務士。