一つ屋根の齎すもの〜富山型デイサービスの現場で〜

「このゆびとーまれ」を訪問して、何とも自然な雰囲気であるとの印象は以前の記事でも触れた。そうした自然な空間を維持するためには人手がかかることも書いた。多くの人が運営に係るなかで、運営に携わる側の人々にも様々なドラマも生まれている。伺った際、西村副代表は「私たちの方が教わることが多い」としみじみとした口調でその一コマを語ってくれた。

『このゆびー』で働くスタッフは28人。そのほかに有償ボランティアが6人。有償ボランティアは全て養護学校の卒業生で、年間30〜40万円程度の報酬を支払っている。そのほかはみな「お昼だけ食べていってください」という以外は一切無償のボランティアだ。
無償ボランティアは主婦も多い。そのなかに家庭のなかがうまくいかず、心の病を患った人もいた。家にることが堪えられないという事情もあり、『このゆびー』のボランティアに応募した。週1回のボランティアだったが、利用者やスタッフとのふれあうなかで本人自身が癒され、いつの間にか病気も完治した。「私は死ぬことも考えていました。お陰で命拾いしました」。後に本人が漏らした言葉に西村さんは初めてハッとしたという。
ホームページ等でボランティアに常に門戸を開いている『このゆびー』。最近はニートの応募も目立つという。「最初はお母さんときます」。人との関わりになれていないため、最初は外で車洗いの仕事などをしてもらうというが、だんだん慣れて楽しみに通ってくる人も多いという。
”子どもから高齢者まで、障害のあるなしに関係なく一つ屋根の下で暮らせる”そんなある意味当たり前のケアサービスを提供したとの思いではじめた事業も、はじめのうちは「あそこは法律に違反したことをやっている」と陰口をたたかれた。創設メンバーの情熱で今日に至った『このゆびー』の運営はいまでも決して楽ではない。それでも多くのドラマを紡ぎだしている『このゆびー』。こうした取り組みを支援する施策を打つことはもちろん大切だ。ただ、少なくと『このゆびー』のような”場”は制度をいじるだけで創出できるものではないことも確かだ。

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