平成25年3月に、成年後見制度を利用したがために選挙権を行使できなくなったことが、憲法に反するかどうかが争われた裁判で東京地裁は成年被後見人から一律に選挙権を剥奪する公職選挙法の規定は憲法違反であり無効との判断を示した。

この判決を受けて議員立法により、成年被後見人の選挙権と、さらには被選挙権の欠格条項を削除することなどを内容とする公職選挙法等の改正がなされた。

東京地裁の判決では、選挙権を行使するに足る能力のないものに選挙権を付与しないとする立法目的には合理性があるとしつつ、財産保護の制度である成年後見制度を用いて趣旨の違う選挙権の剥奪を行うことに合理性はない。

つまり成年後見制度の本来の趣旨から逸脱した欠格条項を設けることはできないとする判断基準が示された。

障害者の権利条約に謳われた差別のない社会の実現という理念も考え合わせると、地方自治体においても成年被後見人等に係る欠格条項を設けるということについては慎重な検討が求められるだろうとの思いから、本市を含め同様の事務を行っている中核市が条例規則等にどのような欠格条項を置いているのか調べてみた。

欠格条項比較上の表はこれまでに取りあえず調べられた範囲でまとめたものだが、それでも欠格条項を置いている条例規則等がかなり存在することに驚いた。

表について少し捕捉すれば、17以降は恐らく欠格条項を設ける必要がないと思われるもの。17の非常勤講師については、地方公務員法の欠格条項が適用されるから敢えて置く必要はないのではないか。市営住宅や奨学金の連帯保証人は、申請の際に求められる印鑑登録の証明が印鑑条例によって取れないのだからこれも必要ないのではないか。

一方、同じ中核市でも欠格条項を置いているところと、そうでないところもあった。取り扱いにばらつきがあることも踏まえ、3月議会では、なぜ欠格条項を置かなければならないのか、欠格条項を削除したらどのような不都合があるかということを質した。なお表の11、卸売市場のせり人の資格については船橋市中央卸売市場が新年度から地方卸売市場に転換されるのに伴って業務条例に成年被後見人に係る欠格条項が新たに設けられることになっている。

何故か?という聴き取りに対する答えは「地方卸売市場になると県条例にも従わなければならない。県条例で欠格条項を設けているから市の条例もそれにならった」との答えだった。

このほか、契約に係る欠格条項は、「成年被後見人、成年被補佐人」以外に「契約を締結する能力を有しない者」(地方自治法施行令第167条の4の規定を準用しているもの)「契約を締結する能力を有しない者(成年被後見人、被保佐人及び被補助人. で契約の締結に関し同意権付与の審判を受けたもの)」「契約を締結する能力を有しない者(被補助人、被保佐人であって、契約締結のために必要な同意を得ているものを除く。)」などさまざま。

◎市議会での議論

つのだ:船橋市では7つの条例規則で欠格条項を置いているが、そのなかで何故一律に権利を剥奪されねばならないのかと疑問を抱いたものがあったので、以下の条例規則について、欠格条項を削除した場合、どのような不都合があるのか具体的に伺いたい。

◆印鑑条例と市民カード交付規則(成年被後見人)

つのだ:このふたつについては一体で考えるべきなので、合わせて伺いたいが、印鑑条例で成年被後見人の印鑑登録はできないとされている。市民カードは自動交付機で印鑑登録証明と住民票の交付を受けるために必要なカードだが、これも成年被後見人は交付を受けられないと定められている。

仮に印鑑条例の欠格条項が削除され、成年被後見人も印鑑登録が可能で印鑑登録証の交付を受けられるとなった場合、市民カードを交付されない理由はなくなり、欠格条項は削除されることになる。一方、印鑑登録を認めないことがやはり必要だとなった場合、成年被後見人が自動交付機で取ることが出来るのは住民票だけということになるが、住民票の交付については、成年被後見人であるが故の制限は法令にも何ら規定されてないから、どちらにせよ市民カード交付規則に成年被後見人に係る欠格条項を置いておく理由がない、即ち成年被後見人には一律に市民カードを交付しないという取り扱いはおかしいとなるがいかがか。

答弁:国が印鑑登録証明事務処理要領で、市町村が準拠すべき事項として永年被後見人を登録資格から除外しているため、全国の自治体で同様の取り扱いをしている。市民カードについては、住民票の写しも重要なものとして成年被後見人を登録資格から除外しているが、同様のカードを交付している自治体によって登録資格の取り扱いに差異がみられることから、今後、研究したい。

船橋市消防団の設置等に関する条例(成年被後見人)

つのだ:本市は消防団員の欠格条項として成年被後見人、成年被補佐人は自動的に消防団員にはなれないとの規定を置いている。しかしながら、同じ中核市に限ってもそのような欠格条項を置いていない市もいくつもある。

成年被後見人等に係る欠格条項を設けていない市はどのように規定しているかというと、例えば「志操堅固、身体強健であって、団員の任務に堪え得ると認められる者」とか「志操堅固,身体強健であって,消防団員としての適任者、さらに市民の信望あり素行善良な者」などとなっており、この要件だけで何か不都合があったという話は耳にしない。

あえて成年被後見人等に係る欠格条項を置かずともこのような規定で十分対応出来るのではないか。これは本人の財産保護の制度である成年後見制度を拡大して用いるなという考え方にも反していると思うが、敢えて欠格条項を設けている理由について伺いたい。

答弁:消防団員は、危険と隣り合わせの災害現場で消防活動を行わなければならない。障害者擁護のため、消防庁で定める条例準則に従い規定している。

つのだ:欠格条項の必要性については是非とも精査をして、必要のないものについては見直して頂きたい。

今回、調べた範囲でも成年被後見人等に係る欠格条項を条例で規定していたり、議会の議決を要しない規則に規定していたり、さらには要綱で規定しているところもあった。このことは「本人を保護してあげているんだ、本人の利益になることだから要綱でもよいのだ」という従来の考え方が根底にあることの現れでもあると思う。

本市は欠格条項を置いている条例規則が7つあると申し上げたが、要綱については分からない。要綱では欠格条項を置いていないかもしれないし、置いているかもしれない。全てを把握出来ている人はこの市役所の中には一人もいない。権利の制限となる欠格条項を設ける場合は極力議会の議決を要する条例のみに限って行って頂きたい。

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