スウェーデン的なもの?〜イケアの企業内保育所〜

スウェーデン発祥の組み立て家具の製造販売会社『IKEA(イケア)』の日本初の店舗(厳密には過去にもイケアの製品は国内で販売していたが全く自前の店舗展開は初めて)が今年(06年)4月、船橋市にオープンした。

イケアの日本進出第1号となる船橋店では、社員のための保育所を当初から計画に組み込んで運営している。「これがスウェーデンの企業文化なのか」と思い視察に伺い、様々お話を訊いた。

1943年創業のイケアは、世界34カ国に235の店舗を展開する国際的な企業に成長を遂げ、日本においても船橋店を皮切りに、今秋には横浜、来年には関西方面ヘの出店計画が既に具体化しているほか、長期的には国内に20程度の店舗展開を目指している(以上はイケア・ジャパンの説明)。

船橋店の5階に開設されている保育所『イケア・ダーリス(ダーリスはスウェーデン語で保育所の意とのこと)』の所長はスウェーデン人のクリスティーナさん(冒頭の写真中央の女性)。日本暮らしは14年ということで、流暢な日本語で施設を案内しながら丁寧かつ穏やかに応対して頂いた。

保育所では生後57日から6歳児までを預かっている。船橋店の社員は約600人いるが、このうち保育所利用の登録をしている人は約100人。定員は75名だが、勤務時間はシフト制を敷いているためオープン以来2ヶ月余りの実績では45名が最大に預かった人数とのこと。所長はイケアの社員だが、保育士はイケアが委託契約を結ぶ国内企業からの派遣だ。

さて、ここから本題に入るが、イケアがなぜ保育施設をつくったのか?私にとっては意外な答えだったのだが、イケアが社員のための保育施設を店舗内に設けたのは世界でも船橋店が初めて、本家のスウェーデンにおいてもイケアは保育施設は設けていないとのこと。イケア船橋店の企業内保育所は決してスウェーデン的なものではなかった。ちなみに本家のスウェーデンでは子どもは市立の保育所に預かってもらえるから企業が特に保育所を設置する必要はないとのことだった。(スウェーデンでは夫婦がフルタイムで働くことが当たり前のため、現在は幼稚園は姿を消し、保育所しかない)。

では、なぜイケアは日本進出1号店に保育所を設けたのか?「日本の女性は結婚して子どもを出産すると会社を辞めてしまう(あるいは辞めざるを得ない)。企業としては多くの時間とお金をかけて育てた人材(正確にはトーレーニングとそれに伴って蓄積されたノウリッジの喪失と表現していました)を失うのはもったいないことです」(所長)。企業に限らず、どのような組織であれ、その盛衰を左右するのは結局は人だ。イケアが日本での事業展開を目指した際に、人材確保のひとつのツボが女性が働き続けることのできる環境の充実、そのための保育所設置だったのだろう。保育所利用の社員に対するアンケート調査では7割近くが「保育施設がなければイケアでは働かなかった」と回答している。

「日本のお父さんとスウェーデンのお父さんでは子育てへの関わり方に違いがありますか」との問いに対しては、所長から即座に「違います!」との答えが返ってきた。

「スウェーデンでは夫婦とも職場ではチームを組んでシフト制で仕事をしていますから、子育てのために時間を調整して保育所の送り迎えや食事の準備に至るまで夫婦が協力しなければ子育てはできません」

「この保育所でも男性の保育士を配置していますが、これも子どもがずっと女性ばかりと接しているのは良くないとの考えによるものです。子育てには男性、女性両方の関わりが大切なのです」

「ただ、日本のお父さんも変りつつあると感じてます。この保育所開設当初(お父さんが休みの)日曜日も保育の希望が多いだろうと考えていましたが、実際には思ったほど多くはなかった。お母さんが働いている間、お父さんが家で子どもの面倒をみているということです」

「お父さんが子どもの面倒をみるといっても、隣の部屋にお母さんがいるのと、そうでないのとでは全く違います。お父さん一人で子どもの面倒を見ることで父親として成長できるんです」

私自身、まだまだ成長の余地はあると感じた。

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